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中へ入ると、俺から見て左に火星の貴族の人が並べられた椅子に座っていて、右には太陽の貴族の人が座っていた。そこには兄様や姉様、母様、父様の姿があった。しかし、叔父様だけはそこには見当たらず、前を向く。
すると、長い階段の上に置かれた玉座に叔父様が座っているのを見つけた。その横には火星の貴族の長であるジーク様が立っている。
「……っ」
思わず下を向いてしまう。怖いと、思ってしまうから。
下を向くと、赤い絨毯が目に入る。ひらひらした自分の来ている服の端も見える。
ゆっくり、ゆっくり叔父様達のいる方向へ近づいていき、立ち止まる。
すっと玉座から立ち、叔父様はこう言い放つ。
「これより、婚約の儀式を開始する!」
それを聞いて、ああ、俺はヴァルド様と結婚するのか、と他人事のように考える。
そんな中、淡々と発せられていく言葉を左から右へと聞き流し、はいと返事をしていく。
仕方の無いこと……これを乗り切れば、これさえ無事に終えれば、ショウマもきっと安全。
心の中で笑ってしまう。こんな時でさえもショウマのことを考えてしまうのだから。違う人と婚約しようとしているのに、だ。
「……レイン、ヴァルド王子。ここに誓いのキスを。」
俺はヴァルド王子と向き合う。
ああ、とうとうキスしてしまう。本当は、初めてのキスは、俺の想い人に捧げようと思っていた。でも、仕方がない。ヴァルド様とキスをすれば、婚約は確実なものとなり、俺とショウマの縁を確実に断つことが出来る。
俺はヴァルド様の背に手を回し、ヴァルド様は俺の背と後頭部に手を当て、顔を近づける。
俺は目を薄く開き、ヴァルド様の目を見ながら、確実に唇を近づけていった。
あと数センチ、数ミリ、という所で、それは起こった。
バンッッ!!!!
皆が皆、何事かと豪快に開かれた扉に視線を向ける。
俺もヴァルド様も、叔父様も皆、その扉に視線を向けていた。
な、なんで……っ
俺はその姿を見た瞬間、涙が頬を伝った。
「レイン!!!!」
姿を現したのは、“ショウマ”だった。
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