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「ど、どう……して……?」
一度溢れたら止まらない。どんどん涙が溢れてきていた。ヴァルド様はそれを見て、「あいつがお前の……」と言ってショウマを見た。
「……レイン」
肩が跳ね上がり、息が詰まった。そして、周りはシーンと静まり返る。後ろから氷のように冷たく、低い声で、俺の名前が呼ばれたからだった。
「お前は、私を裏切ったのだな……。」
俺は、振り返ることが出来なかった。
怖いっ……怖いっ……
「あんな肉の塊でしかないものを、本当に想っていたなど、この太陽の貴族の恥でしかないっ!!」
そう言って叔父様は俺の首を片手で掴む。
「う、ぐっ……!」
「「レイン!!」」
そう名前を呼んだのは、ヴァルド様とショウマだった。
「動くな!!」
叔父様はヴァルド様に目を向け、目を合わせるとそう叫んだ。その瞬間、ヴァルド様の体は硬直したように動けなくなる。その次に、叔父様はショウマにも目を向け、目を合わせて、「お前も動くな!」と叫んだ。その瞬間、ショウマは立ち止まる。
「かはっ……ぁぐ……!」
気道を上手く掴まれていて、息が出来ず、頭に酸素が行き渡らないせいか、頭がクラクラする。苦しくて苦しくて、涙も出てくる。
「苦しいか……俺はお前に裏切られてこれ以上の苦しみを味わった!」
叔父様の一人称が“俺”に変わり、さらに首を絞める力が強くなる。
「くはっ……ぁ……!!」
俺はそろそろ意識が薄れてきて、叔父様の手を握る。
「おい、それ以上やると本当に死んでしまうぞ?」
そう言ったのはジーク様だった。しかし、叔父様はジーク様に視線を向け、目を合わせると「黙れ、動くな。」と命令する。
「……っ!!」
当然、ジーク様もヴァルド様と同様に身体が硬直したように動けなくなり、一言も喋れなくなる。
「お前は俺のお気に入りだったんだ……だが、あんなものと関わりおって!!」
ぐっとさらに首に力がかかる。
もう……意識がっ……
意識が飛びかけていた時だった。
「レインから、離れろ!!!!」
そう言って、ショウマが長い階段を上がってくる。一段飛ばし、二段飛ばしと駆け上がってくるショウマに目線を向けた叔父様はその目を合わせて「来るな!」と命令した。
「な、なに!?」
俺は薄れていく意識の中、ショウマが駆け上がってくるのが見えた。
どうして……今、叔父様に命令されたのに……!
「く、貴様、まさか!!」
そして、とうとう最上段まで来て、叔父様の頬にショウマの拳が当たるのが見えた。
バシッ
と音がして、俺の首を締めていた手が離された。その途端、俺はその場に倒れ込み、叔父様も殴られた衝撃で倒れる。
「かはっ、ゴホッゴホッ」
心臓が脳に酸素を送ろうと激しく鼓動する。
「レイン!」
ショウマが、直ぐに俺の横に駆け寄って俺を抱き上げる。
「レイン、大丈夫か!?」
「はあ、はあ、はあ……」
俺は返事が出来なくて、首を縦にふった。
「き、貴様!!何をしたかわかっているのか!!」
その言葉が階段の下から響いた。階段の下からということはどちらかの貴族の人間がそう発したのだろう。その途端、ショウマは階段の下を見下ろした。
「ああ、わかってるさ!!でも、後悔なんてしていない!!」
その後、下にいる貴族達が騒ぎ出す。そして、ショウマはそんなの気にしてないという風に俺の耳に口を寄せた。
「今度は、俺がお前を守ってやる。」
俺はそれに、頷くしかなかった。
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