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「貴様!ハルジ様になんてことを!」
「はやく!誰か!あのものをここから連れ出してちょうだい!」
なんて声が下から聞こえてくる。ハルジというのは叔父様のことだ。
そんな中、数人の貴族が階段を上がってくるのが見えた。
あれは……!
「「レイン!」」
自分達のことを貴族だと忘れたのか、ショウマの時と同じく一弾飛ばし、二段飛ばしと階段を駆け上がってくる。
そう、その姿は、兄様と姉様であった。
すると、目の端で何かが動くのを感じる。俺はその方向を見る。
そこには、頬を抑えて上半身を起こしている叔父様の姿があった。
「……貴様、月の貴族だったか…」
え……?月の、貴族……?
叔父様は、既に分かっていたことを確かめるようにそうショウマに聞く。唖然としている俺とは反対に、ショウマは冷静に答えた。
「そうだ。俺は月の貴族だ。」
そう聞くと、叔父様はクククと笑い始めた。その様子が少しおかしくて、下にいる貴族達もだんだんと静かになっていく。
すると、そこで階段を駆け上がってきていた俺の家族が俺たちの元へやってくる。叔父様が笑っているのを見て、みんな怪訝そうな表情を叔父様に向ける。
「何が、おかしい」
俺や姉様達と同じく、叔父様の様子がおかしいと思ったのかショウマは叔父様に怪訝の目を向ける。
「貴様、このことが全て自分で考えた結果だと思っているのか?」
ショウマは訳が分からないという表情を浮かべる。当然俺も姉様もだ。
「変だとは思わなかったのか?護衛や見張りが一人もいないことを。」
「「っ!!」」
「そう言えば……」
「いつもの見張りが……!!」
兄様と姉様は思い当たる節があるようだった。そして、ショウマは目を見開き、叔父様を睨みつける。
「どういう意味だ?」
「貴様が月の貴族だということは最初からわかっていた事だ……つまり、このことは全て俺の思い通りだったというわけだ!」
ニヤリと不気味な笑顔を浮かべた途端、最上段の左右の扉から見張りや護衛がぞろっと出てくる。
「貴様が月の貴族ならば、俺の能力は通用しない……しかし、お前の周りの人間はそうはいかないだろう?」
だんだんと叔父様のしようとしていることが読めてくる。しかし、それに気づくのは少し遅かった。
「まさか……っ」
「お前ら、逃げろ!」
兄様と姉様はショウマと俺の前に立つ。胸の奥がざわざわする。何かが起きるのを確信した。
叔父様は護衛や見張り達と目を合わせて、こう命令する。
「レイン、及びショウマ。それに味方するもの全てを殺せ。」
それを聞くと、見張りと護衛達が一斉に動き出す。
「逃げなさい、レイン!ショウマ!」
「っ、でも!」
そんなことをしたら、姉様も兄様も……!
「いいから逃げろ!!年上のいうこと聞け!」
兄様や姉様の言葉にショウマは少し考えてから頷いた。俺はショウマに腕を引っ張られ、階段を一気に駆け下りる。
「っ、ショウマ……!!」
「心配すんなレイン。俺が守る。」
ぎゅっと握られている力が強くなった気がした。そこから伝わる熱が、俺を安心させる。
「……わかった。」
しかし、そんなことをしているつかの間、「うああ!」「きゃああ!」と悲鳴が聞こえてくる。その途端、俺達のすぐ横を、兄様と姉様が転げ落ちていくのが見え、俺は思わず叫んでいた。
「兄様!姉様!」
「貴様ら!レイン、及びショウマ。それに味方するもの全てを殺せ。」
下にいる貴族達にもそう命令する。すると、貴族達は階段を駆け上がってくる。
「くっそ……!」
ショウマも俺も立ち止まる。後ろを振り返れば見張りや護衛達が、前を見れば貴族達がいた。
「レイン。」
ぞくりっと背中に寒気がした。その名前を呼んだのは叔父様で、俺は思わず振り返ってしまったのだ。
「お前もだ。ショウマを殺せ。」
目を、合わせてしまった。
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