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「みーちゃん、遊園地いつ行きます?」
学校からの帰り道。
真っ暗になった夜道をのんびりと二人で歩く。
別にいいと言っているのに七海は俺を家まで送ると聞かず、勝手についてきている。
「今週末どうですか?それか開校記念日か…」
「受験が終わってからだ」
「えーっ」
そう返したら、七海が不満そうに声をあげる。
やらなきゃいけない勉強がたくさんあるんだと息巻いていたのはどこのどいつだ。
「合格祝いということでいいだろう。だから合格しなければ遊園地へも行けないな」
フフンと煽るように鼻で笑ってやる。
この時期の受験生にプレッシャーを与えるべきかどうかの判断は難しいが、七海の場合はこういう言い方をしてやったほうがやる気を出しそうだ。
案の定何か燃えたようにその瞳が輝き出す。
「分かりました。そういうことならめちゃくちゃ頑張ります。絶対合格して遊園地行って観覧車で視姦プレイしながら犯…」
「おい、何か言ったか」
「みーちゃんが大好きですって言ったんですよ。おかげでヤる気でましたっ」
ニコニコと全く悪びれもなく向けられる笑顔をじろりと睨む。
全くコイツの頭はどうなっている。
俺の高校時代とはえらい違いだ。
点々と街路灯が並ぶ住宅街は、俺達以外誰もいなかった。
夜空には綺麗な三日月が浮かんでいて、七海がそれを見ながらバナナは好きですか?とか謎の質問をしてくる。
意味のない質問をのらりくらりと返しながら、ちらちらと隣を気にしてしまう。
心臓が速まるのを感じながら、俺はそっと手を伸ばした。
「じゃー俺のバナナは…ってあれ?珍しいですね」
驚いたような声が隣から落ちてきたが、俺はもう視線が向けられずギクシャクと前を見据える。
伸ばした右手が熱い。
「そ、その…今回のことだが」
緊張でどこか声が上擦ってしまう。
七海が不思議そうに隣で顔を傾けたのが分かった。
「…い、色々すまなかった。その…勘違いしてしまって。お、俺のことを考えてくれていたのに怒ってしまった」
なんとか絞り出した言葉に、七海はなんでもないように「いーえ」と返事をする。
「俺も不安にさせちゃったし、お互い様です。それにみーちゃんの気持ちが分かって俺は嬉しかったですよ」
「お、俺の気持ちは…」
バクバクと心臓が速まっていく。
顔が熱くなり、息が浅くなっていく。
七海に今の気持ちを伝えたい。
今回のことで俺と七海の関係は酷く脆いものなんだと実感してしまった。
七海の気持ちが離れたら、それでこの関係は終わってしまう。
俺が追いかけることはマイナスにはなってもプラスには絶対にならないからだ。
ギュッと右手から力強い感触が伝わってくる。
俺から伸ばして繋いだ手は、しっかりと七海に握られていた。
七海は足を止めて、俺の言葉を待っている。
きっとコイツには俺の言おうとしていることなんて分かっていて、だけど茶化さずに待ってくれている。
心臓が止まりそうだ。
「…お、俺はその…こういうのは慣れて無くて、お前に会うまでこんな気持ちにはなったことなくて…あ…えっと、お、お前がちゃんと生徒なのも分かっていて…」
一言。
たった一言で済む言葉が出てこない。
屋上での結城を思い出してしまう。
アイツもこんな気持ちだったのか。
「大丈夫ですよ。俺もみーちゃんが教師なの分かってますから。…それで、みーちゃんの気持ちを教えて貰えますか?」
七海に促される。
ああくそ、そんな急かさないでくれ。
余計なことを言いながら一生懸命心の準備をしているが、やはりなかなかその言葉は出てこない。
「だ、だから…俺は…その…たぶん…」
「たぶん?」
「あ…いやたぶんじゃなくて…絶対」
「絶対、なんですか?」
「……っ」
ものすごくウズウズしている顔が目の前のある。
もう絶対言いたいこと分かっているじゃないか。
「……で」
「で?」
七海が首を捻る。
俺はもう腹を括った。
「…っで、電話してもいいか。た、たまに」
「えっ?」
「お、俺の家にしばらくは来ないんだろう。これから昼休みも忙しくなるし…ぜ、絶対俺はまた…不安になる」
「…えーと」
やっと言えた。
もう心臓がバクバクしていて今にも潰れそうだ。
でも言えた。言い切った。
謎の達成感に包まれていたが、七海はうーんと後頭部をかいている。
なんだ、もしかしてダメか。
青くなった俺の顔に気付いたのか、慌てたように七海は俺の両手を握った。
「あー、いえ。ちょっと予想の斜め上だっただけです。いつでも電話して下さい。すげー嬉しいです」
そう言って七海はいっぱいの笑顔を見せてくれた。
手を繋ぐところから始めて、電話をして、着々と俺の中で二人の関係は進展している。
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