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「――な、なんで泣くんですか。俺変なこと言いました?」
「…い、言ってない」
顔を背けたいが、七海にしっかりと両頬を手で包み込まれているためにそらすことが出来ない。
零れ落ちていく涙が七海の手を濡らし、必死に堪らえようと唇を噛みしめる。
「大学一緒に行けるのみーちゃんは嬉しくなかったですか?」
「…お前と大学に行くことは正直楽しみにしている」
「じゃあ嬉し涙ですか?」
「違う。悔し涙だ」
「なんで!?」
七海が目を丸くさせるが、一度流れた涙はそう簡単には止められない。
俺の頬を離してくれないため、七海に見つめられたまま次々と涙が零れ落ちてしまう。
「泣き顔見るとムラムラします」
「…っお前は」
「可愛い。めちゃくちゃ綺麗です」
そう言って七海は俺の瞼に口付ける。
こんな風に泣いてしまって、また七海に誤解されても嫌なので目を閉じてそれを受け入れる。
「みーちゃんは俺が信用出来ないですか?」
「…いや、信用してる。ちゃんと信用してて…」
「さっきの大学の話でも思ったんですけど、俺はみーちゃんにもっと頼ってもらいたいです」
「…え?」
そっと目を開けると、優しげな瞳が俺を見つめていた。
「年下かもしれないけど、俺はみーちゃんのことちゃんと考えてます。俺に心配掛けるかも、じゃなくて心配掛けてほしいです」
「…な、なんだそれは」
「困ったことがあるなら一緒に悩みたいんです」
「お…お前に余計な心配を掛けることが良いこととは思えない」
俺は大切な人に心配なんて掛けたくない。
そう思っているのに、涙が止まらない。
「意地っ張りさんですか。だってほら、俺達性格違うから悩み相談したら2つ分の考え方が出来ますよ」
「…それはそうだが」
「あっ、でも別れ話だけは受け付けないです。そこは一生相談窓口締め切ってます」
そう言って七海はニッコリと笑う。
真面目な話をしているのかと思いきや、そんなフザけた言い方をするのは七海らしい。
張り詰めていた気持ちが、どこか緩んでいく。
「…お前が身体が目的のような発言をするから、いまいち信用できないのかもしれない」
「えーっ、でもそこは外せないっすよ。そもそも好きな相手だからムラムラするわけじゃないっすか。逆にみーちゃんはしないんですか」
「俺はこんな公共の場所ではしない」
「じゃあ公共の場所じゃなかったらしますか」
「…そ、それはすることもあるかもしれないしないかも――」
「どっちですかっ」
というか何の話だ。
いつの間にか七海の会話のペースに乗せられてしまっている。
いつもだったら一度キスをしたら場所を問わずあっという間に人を襲うくせに、今は手を出さずにくだけた話をしてくれている。
さっきまでグズグズに考えてしまっていた心がどこか絆されて、クスリと笑ってしまう。
俺が笑うと、七海も嬉しそうに笑う。
どこまでも屈託のない笑顔は俺の大好きな表情だ。
「これからもずっと一緒にいるんですから、もっと俺を頼ってください」
「…ずっと一緒?」
「はい。ずーっとです。休みの日はデートして、エッチして、俺が教師になって結婚したら二人のお家建てて、犬飼って、エッチして…」
「やはりお前は俺の身体が…」
「全部目的です。みーちゃんの全てが俺は知りたいし、欲しいんです」
ふざけた言葉も、冗談も、大嫌いだった。
それなのにいつの間にか受け入れられるようになっていて、七海の言葉の一つ一つに心が踊る。
七海の未来計画を実行するにはきっと色々と弊害がありそうだが、それはとても魅力的だと思ってしまった。
子供が勝手に言っている理想だとか夢物語だとか、そんな気持ちにはならずにただ胸が熱くなる。
何を考えるでもなく、自然と口にしていた。
自然と心が踊るままに、伝えたくて堪らなくなってしまった。
「――好きだ」
そう言って表情を緩ませる。
言葉を口にしたら怖くなるほど愛しい気持ちが溢れ出していく。
「お前が大好きなんだ」
そう伝えたらどうしようもなく笑顔が溢れる。
七海の目が見開いて、呆然としたように向けられた顔がぶわっと赤くなっていくのが分かった。
耳まで赤くなった顔がなにか言いかけた時、ちょうど観覧車が下へたどり着き扉が開いた。
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