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ボロボロの侵入者
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傷の周辺は感覚が麻痺しているようで、侵入者は特に暴れることもなく、大人しく縫合施術を受けた。
「終わったぞ。どうだ?」
「さっきより楽だが……寒い……。」
毒抜きをして、傷を縫ったものの、流れた血液が帰ってくる訳ではない。
ロランは後で必ず輸血が必要だと思っていた。
「こっちに来い。」
「何故?」
「俺も寒いんだよ。2人でくっついていた方が暖かいだろう?」
そう言うと、侵入者は顔を上げ、長い前髪越しにロランに視線を送った。
視線が重なった瞬間。
バチッ
2人の間に電流のが走ったような不思議な感覚があった。
2人とも驚いて顔を見合わす。
しかし、首を傾げるだけでそれが何なのかは分からなかった。
「取り敢えず、来い。」
ロランは結局、警戒して中々寄ってこない彼を無理矢理自分の腕の中に収めた。
矢張りすっぽりとまでは行かないまでも、ロランよりは随分小さい身体だった。
「お前、名前は?」
「………ユア。」
「なんて書くんだ?」
「友の愛と書いてゆあ。」
「友愛か。綺麗な響きだ。」
「あんたは?」
「俺はロラン。蘭の露でロラン。」
「花の名前か。いい名前だな。」
腕の中でウトウトし始めた侵入者、改めユアに、ロランは聞く。
「ユア、お前、性別と血液型は?」
「血液型はO型、性別は………」
性別を言い終わる前に眠ってしまった彼を見ながら、ロランはため息を吐いた。
ふと、咲いたばかりの花の様な気持ちのいい香りがユアから漂ってくる。
(こいつ……Ωか。しかも発情期の…)
ロランはα専用のヒート抑制剤を服用しているため、特に影響は無いが、これは気をつけなければならない。
面倒な事になったと舌打ちをした彼は、腕の中のユアを抱えたまま、図書館の全出入口を施錠した。
そして、ユアを図書ルームの奥にある養護スペースに有る簡易ベッドに寝かせると寒くないように布団をかけてやる。
今夜は傷口から侵入した菌を駆逐するために確実に熱が出る。
ロランは医者である父のカナタに連絡を取るべく、館内固定電話へと、手を伸ばした。
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