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偏屈な人
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「深山(みやま)、明日のスケジュール確認を頼む。」
「明日は13:00から、大宮建設の田崎社長との御約束があります。その後の予定は特に、入っていらっしゃらないかと」
「分かった。今日中に必要な書類はもう無いだろう?」
「はい」
「ありがとう、深山今日はもう大丈夫だ」
「はい、失礼します」
パタンと社長室の扉が閉まった。
どんな仕事にも、文句を言わず付いてきてくれる、仕事熱心な秘書の深山を帰らせると、東條は少し落ちてきた前髪をかき上げながら、椅子に深く腰掛ける。
仕事は好きだが、気を張り続けるのにも体力がいる。
一息ついてから自分も帰ろうと思い、背広の内ポケットからシガレットケースを取り出し、煙草を1本口に咥える。デュポン(ライター)をピィンッと部屋に響く甲高い音と共に指で弾き、火を灯した。
深く煙を吸い込み、ふぅーっと紫煙を吐き出す。
東條は何時間かぶりのニコチンを摂取しながら、携帯を手に取り電源を付けた。
ふと電話のアイコンの右上に、赤く1と表示されているのに気付く。
この番号は誰のだ?
見た所によると、留守番電話も入っていないようだった。
かけ直す前に、一応メールもチェックしておこうと思い、メールボックスを開いたのだが
「・・・ん?」
さっきの不在着信からメッセージが入っていたのだ。
その番号をタップしてみると
【夢中になる程の愛って、どんなものなんだろうね。】
【夢中になる程愛されてみたかった。愛してみたかったよ】
東條は眉を顰めた。
間違いか?それともイタズラだろうか。
とにかく東條にとっては、くだらな過ぎる内容だった。
「くだらない」
ふっと鼻で笑い、そう呟いた。
無視をしても良かったのだが、何となく返してみることにした。
ーーくだらないな。
ーー愛など、生きて行く上で不必要だろう。
ーーイタズラなら悪質だ、そうで無ければお前は番号を間違えている。
東條にとっては愛何ていうものは、オプションにしか過ぎないのだ。そのため恋人を作る、なんて行為は以ての外だ。
じゃあ童貞なのかと聞かれればそうではない。
31の若さで社長になるのには、相当苦労した。その過程で恋愛なんかに、うつつを抜かしている場合では無いと23の時に悟ったのだ。
恋人なんてものを作らなくても、欲を吐き出すための手段はいくらでもあるだろう。
こういう立場で生きていれば、地位と、金、そして東條の顔目当ての奴らが、腐るほど寄ってくるのだから。
そういう奴らを使えばいいというだけの話だ。
くだらないと、切り捨てはしたがこの思考は常人にはあまり理解できないだろう。
何となくだが、東條は少し楽しんでいた。
まるで新しいおもちゃ与えられた子供のように。
どんな返信が返ってくるのだろうと、考えながら家に帰る支度をした。
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