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偏屈な人
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大事な約束は13:00から。
特に切羽詰まるような仕事もない。
明日の朝はゆっくりできそうだ、などと考えながら車を走らせる。
いい時間だというのに、東京の街の喧騒は耐えない。
賑やかなのはいいが、騒がしいのはあまり好きではない。
東條はマンションに着くと、パスワードを入力し、
独りで暮らすのには少々広すぎるくらいの部屋へと入った。
廊下を抜け、電気を付ける。
明るくなったリビングは何とも、もの寂しげだ。
背広とその下に着ていたジレを脱ぎ、内ポケットから携帯とシガレットケース、財布を取り出すと机に置き、背広はソファの上にシワにならないように置いた。
そして自分もソファに座りテレビを付けた。
テレビは別に見る訳ではない、ただ変に静かなのも落ち着かないのだ。
ネクタイを緩め、シャツの袖のボタンを外し、右腕に付けていた腕時計を外すと、深く背もたれに凭れ掛かり携帯を開く。
さっきの奴だろうか。
メッセージが1件届いていた。
『ーー番号を間違えていたみたいです。
申し訳ありません。
くだらないでしょうか?
僕は、普通の形の愛を知りません。
どういうものなのかも分かりません。
ですが、不必要だとも思いません。』
"僕''という事は、男だろうか。
しっかりと謝罪は出来るようだ。
そこは好印象なのだが、俺に言い返すとは、感心しないな。
面白い奴だ。生意気だが気に入った。
「ーー生意気だな。だが、そういうのも悪くないな」
「ーー東京に住んでいるのなら今から30分後、ここに来こい」
「ーー少し遊んでやろう」
と、自分の住所を添えて送信した。
少々無茶苦茶だっただろうか。
顔も名前も知らない、間違い電話の相手を家に呼ぼうとしているのだ。
まあ、でもいいだろう。言い返したのはあちら側だ。
「遊んでやろう」というのは、勿論そういう意味でだ。
男でも女でも関係ない。
自分の欲さえ吐き出せればいいのだ。
面白い獲物を見つけた東條は、愉快な気分だった。
機嫌良さげに煙草を手に取り火を点け、紫煙を吐き出した。
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