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偏屈な人
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今日は公園で1泊かな。なんて事を考えながら
モバイルバッテリーを袋から取り出す。
圭は、かなり女顔なのだ。以前それが原因で襲われかけたことがあったため、外で朝まで過ごすという行為は、できる限り避けたいのだ。
かと言って、宛にできるような友達も居ない。
所持金はもう1500円程しか残っていない。
1500円で泊まれる所などラブホテルでも中々無いだろう。
はぁー、と本日何度目かも分からないため息をつき、公園に戻ろうとした時、圭の携帯が鳴った。
『ーー生意気だな。だが、そういうのも悪くないな。』
『ーー東京に住んでいるのなら今から30分後、ここに来こい。』
『ーー少し遊んでやろう。』
「えっ・・・」
顔も名前も知らない相手から、突飛な内容と共に何処かの住所が送られてきたのだ。驚く他もない。
恐らく相手の住所だろうが、この御時世何かと物騒だ。もしかしたら、家の住所ではなく、どこかの倉庫の住所を指定していて、複数人に襲われるのではないか。など、邪な考えが圭の頭を過る。
今日は本当についていない。
恋人からの長年に渡る暴力から逃げ出せたと思ったら、安心するもつかの間。居場所が無い事を思い出し、1人寂しく公園のベンチに長時間の滞在。
叔父は相変わらず優しかったが、今日は取り敢えず宿無し状態。そして最後には見知らぬ相手に、急にここに来いなどと、上から目線で呼び付けられる始末。
一体全体、前世で何をやらかせばこうなるのやら。
圭は頭をフル稼働させ、考える。
外でこのまま朝を待つか、知らない相手の家に行くか。
正直、五分五分で危険だ。
指定された住所は、現在自分が居る場所から、電車に乗って15分程 。
メッセージが届いた時間は21:05。
今の時間が21:10。
メールには30分後、ここに来いと書いてある。
駅までは走れば5分もかからない。
自分は現在宿無し。宛もない。
考えても仕方が無い。時間が無いのだ。
もし何かがあったとして、もうその時はその時だと圭は完全に開き直り、身体が痛むのも忘れて駅に向かって走った。
全力で走った為に息を切らし、はあはあ、と肩で息をしながら、何とか間に合った電車に乗り込んだ。
それにしても急過ぎる、いくら何でもこれは強引過ぎではないか。
それに、メールに書かれていた "そういうのも悪くない"なんて。何様のつもりなのだろうか一体。
あった事も話した事も無い相手を、もう早速嫌いになりそうだった。
そういえば、遊んでやろうとはどういう意味なのだろうか。
いい事で無いのは確かなのだが、ここまで強引に決められてしまうとなると、行動する他無かったのだ。
それになんとなく、決定権は絶対的に向こうにあるような気がして、断ることも出来なかった。
もうあと1駅で相手の住んでいる所の駅に着く。
一応メールを入れておいた方がいいと思い、携帯を取り出した。
「ー随分と強引ですね。勘弁して欲しいです。」
「ーそろそろ貴方の家の最寄り駅に着きます」
「ー会ったらまず、文句を言わせて頂きたい気分ですね。」
たっぷりと皮肉を込めた。
今日1番の溜息をつき、流れる外の景色をぼーっと眺める。
何だか今日は一日で、1年分の疲労を受けた気分だ。
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