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情と優しさ
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ガチャっと玄関ドアが閉まり、1人になる。
一人になると東條この家の広さが浮き彫りになり、なんだか少しだけ寂しい気持ちになる。
昨日に比べれば大分打ち解けたような気もするが、所詮今日で終わるであろう関係なのだ。
お互いの事をまだ何も知らない。というのがその証拠だろう。
あまり余計なことは考えずに夕方まで過ごしたい。
始まりこそ悪かったとはいえ、東條にはかなりお世話になった。今日で終わりの関係なら何か最後にお礼をしようと思ったのだが、生憎圭の手持ちでは大したものは何も買えない。
何か出来ること。
自分には何が出来る。
ぐるくるとそんな事を考えながら、腕を組む。
そうだ。あるじゃないか。
自分に出来る事。
その前に東條に借りていた服を脱ぎ、自分がここに来る時に着てきたスキニーの黒いズボンとTシャツを着る。
グレーのパーカーと携帯と財布はソファの上に置いておき、ズボンを膝の当たりまで捲った。
まずは状況を確認するために借りたTシャツを持って、風呂場へ向かうと洗濯機を覗き込んだ。
すごい。乾燥機付きだ。
意外と溜めておいて一気にするタイプなんだ。
などと考えながらも手にしたTシャツを、元々入っていた洗濯物と一緒に洗濯機に放り込み、洗剤と柔軟剤を入れスタートボタンを押す。
大分図々しいのだが、やらないよりはマシだ。
次は風呂掃除の道具を見つけ出し、浴室の掃除を始めた。丁寧に磨いて水で洗い流す。
風呂掃除が終わり、リビングへ戻ると換気をするために、ベランダを開け掃除機をかける。ついでに寝室のベッドメイキングもしておいた。
掃除機をかけ終わると丁度洗濯が終わったようで、乾燥機をかけさせてもらった。
乾燥機付きの洗濯機いいなあ、なんて思いながらも圭は一つ一つ家事をこなして行く。
最後に東條が帰って来てから食べれるように、夕飯を作ろう思い気付いたのだが、東條の好きな食べものすら知らない。
なんだか少し、切なくなった。
好きな食べ物の一つや二つくらい聞いておけばよかった。
取り敢えずお金もないし、何よりもこの部屋のパスワードを知らない。一回外に出たらもう戻ってこれないのだ。
"有るもので作らなくてはいけない"という事もあり、冷蔵庫をもう一度よく見る。
そして、今日1番の驚きは朝は全然見つからなかったはずの米が、以外にも近くにあった事。
こんな所にあったんだ、なんて苦笑いをしながら米を研ぐ。
炊飯器に米をセットして、朝のオニオンスープを小鍋に少し移し、大鍋の方には冷凍庫に入っていた牛肉を解凍してカレールウと一緒に入れて煮込み、調味料で味を整えた。
そしてまた野菜を適当に切り、皿に盛り付けてラップをして冷蔵庫に入れておく。
そうこうしているうちに、乾燥機が圭を呼んだ。
風呂場へ行く前に今の時刻を確認する。
時刻はもう17:00近くだ。
急がなければいけない。
東條がいつ帰ってくるか分からない。
パタパタと小走りで風呂場へ向かい、乾燥機から東條の大きい服を取り出しリビングへ持って行った。
ワイシャツ類はハンガーに掛けてクローゼットに閉まい、他のものは勝手にあれこれすると、東條が分からなくなってしまうと思い、綺麗にシワを伸ばしながら畳んでソファの上に重ねて置いておいた。
一通り終わって、ソファに座り携帯を確認したのだが、叔父からの連絡はまだ無い。
急いで動き回ったせいか、座るとどっと疲れが出てきてしまい、圭はいつの間にか眠ってしまっていたのだった。
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