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「今回のプロジェクトもうちと協力して頂ける。そういう事で宜しいですか?」
「お願いするよ。何と言っても君は信用できる、うちの会社にとってもプラスになるしね。頼んだよ」
「いいお返事を聞かせて頂き、ありがとうございます。」
「うん、じゃあ今後については下の者を来させるから、誰か対応宜しく。あとは必要な事があったらTELかFAXで。それじゃあ私はこの辺で失礼するよ」
パタンとドアが閉まると、ふぅーと息をつきタバコを手に取った。
大宮建設の田崎は東條に対して絶対的な信頼を寄せてくれている。
東條自身も田崎を信頼している。大宮建設の協力があるという事もあって今回のプロジェクトは、いい流れで進みそうだ。
「社長、お疲れ様です。この後はどうなさいますか」
「そろそろ17時か。今日はもう帰ろうと思っているのだが、何かやる事は?」
「いえ、プロジェクトの契約が無事終わりましたので、暫くはお暇になると思います。珍しいですね、何か御予定でも?」
「いや、大した事では無いんだがな。ちょっと家で人を待たせているから、早めに帰ってやろうと思ってな」
「・・・社長にも遂に愛せる人が出来たのですね!私は常日頃心配していたのですよ。仕事にストイックなのもいいとは思いますが、一夜の関係は虚しいですからね。社長はもう少し自分本位になってもいいと私は昔から思っていたんです。あぁ、それなら本当に良かった」
深山の言うことにタバコを手から落としそうになる。
危うく会社を燃やすところだった。
「待て深山。どうしてそうなるんだ。俺は一言もそんな事を言っていないだろう」
「あれ?社長恋人が出来たのではないんですか?とても優しげな顔つきをしてらっしゃったので」
「冗談はよせ、俺は恋人など作らないと何回も言っているだろう。もう帰るからお前ももう大丈夫だ」
「そうですか・・お先に失礼します」
勘違いではないと思うんだけどなぁ、などとぶつくさ言いながら深山は社長室を出て行った。
パタンと音を立て閉まるドアを見つめながら、タバコの火を消す。
何なんだ一体。俺が優しい顔つき?
東條は首を捻りながら帰る支度を始めた。
会社を出て、愛車のレクサスに乗り込みエンジンをかける。
それにしても、深山はどうしてあんな事を言ったのだろうか。さっきの事が気掛かりで仕方がない。
確かに東條は昨晩、圭を抱かなかった。
と言うよりは"抱けなかった"の方が正しいのかもしれない。
いくら他人に興味が無いからとはいえ、身体中に傷を付けた相手を無理やり抱こうなどとは思えないだろう。
確かに圭に対して、これまで相手をしてきた一夜の関係の奴等などとはまた、違った感情が芽生えつつはあるのだがそれは愛などとは違う。ただの情なのだ。
見る限り圭は苦労して来たのだろう。深くは聞かない。
聞く気もないが、人の上に立つ東條にはそれくらい聞かなくても分かる。そんな人間が明るく笑っているのを見たら、そりゃあ情も生まれるだろう。
そんな感情も何日か会わなければどうせ忘れるのだ。
余計な事は考えずに家に帰ろう。そう思い東條は残りの家路を急いだ。
マンションに着き、いつも通りパスワードを解除し玄関ドアを開けると、何やらいい匂いが鼻を掠める。
気になりはしたが取り敢えず早くスーツを脱ぎたい。
リビングへ行くと、ソファの上に丸くなって寝ている圭を見つけた。
そして圭が寝ているソファの隅には、自分の服が綺麗に畳まれ置いてあったのだ。
もしかしてと思い、風呂場へ行き洗濯機の中を見てみると、溜まっていたはずの洗濯物は綺麗に無くなっていた。
そういえば部屋も心做しか綺麗になっていた。
どうやら圭は留守の間に掃除や洗濯をしていてくれたようだ。
そのせいで疲れて眠ってしまったのか。それなら、もう少し寝かしておいてあげた方がいい。そう考えながらも部屋着に着替えた。
脱いだ背広とジレとスラックスを掛けるために寝室へ行く。
クローゼットを開けると、減りかけていたワイシャツが綺麗に補充され並んでいた。
その少し離れた位置に持っていた背広などを掛け、寝室を離れる。
今日は1日、田崎と話していたため少し喉が渇いた。水でも飲もうとキッチンへ行くと、何やら鍋にメモ帳が貼り付けてあった。
『お仕事お疲れ様です。今朝のスープをリメイクしてカレーにしてみました。汁物がないと少し味気ないかなって思ったので、少しだけスープを小鍋に移しておきました。一緒に温め直して食べて下さい。あと、冷蔵庫にサラダも入ってます。』
そのメモを読むと、今まで感じた事の無い気持ちが東條の胸の中にドッと流れ込んできた。
その気持ちに蓋をするかのように冷たい水をグッと喉に通した。
突然リビングに携帯の着信音が鳴り響いた。
聞いたことが無い音楽だ。おそらく圭の携帯だろう。
携帯が鳴っていても起きない圭の側へ行き、起こしてやる事にした。
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