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「携帯・・・て・・ぞ」
「んー・・・」
「お・・圭」
「・・・っは!東條さん。え、僕寝てました?」
身体を揺さぶられ目を覚ますと東條の顔が近くにあった。
そして自分の携帯が鳴っていることに気付く。
画面を確認すると叔父からだった。
「すみません、叔父からです。」
「いいから早く出てやれ」
そう言うと東條はソファに座り、新聞を読み始めた。
「もしもし」
『圭、あと40分くらいで東京に着くよ。東京駅まで来れるかい?』
「うん。分かった東京駅のどの辺にいればいい?」
『南口の辺りで落ち合おうか』
「分かった。また後でね」
電話が終わり、通話終了ボタンを押す。
そろそろ向かった方がいいかな、なんて事を考えていると東條が立ち上がった。
「行くぞ、東京駅のどの辺だ」
「え?」
「送っていくから」
「え、いやいいですよ。最後までお世話になりっぱなしはちょっと・・」
「洗濯と掃除と晩飯。やってくれたんだろう?」
「あ・・はい」
「お礼だ」
「いやそれは、お世話になったお礼をしようと思ってやった事なので」
「お前に権限は?」
「・・・ないです」
「だったらお前はどうするべきだと思う?」
「すみません・・お願いします・・・」
「んで、東京駅の何処だ」
「南口です・・・」
「ん、いい子だ」
眼力のある目でじっと見つめられれば、お願いしますと言うしかないだろう。
どれだけこの人は強引なんだ。ここでまたお世話になったらお礼の意味が無いだろう。なんて心の中でツッコミながらもパーカーを羽織り、携帯とモバイルバッテリーをポケットに入れた。
東條は下を履き替えるからちょっと待ってろ、と言うとリビングを出て行った。
寝室から戻ってきた東條の背中を追い、お邪魔しましたと小声で言ってから玄関をでる。
マンションを出ると、車を取ってくるから待っていろ。という東條の指示に従い大人しくマンション前にあった植木の前に立って待つことにした。
暫くすると黒に近いグレーの高級車が圭の前で止まった。助手席の窓が開き、運転席の東條が見えた。
「乗れ」
「はい」
どんな仕事をしていたら、こんないい車に乗れるんだ。なんて事を考えながら言われるがままに、助手席の扉を開け乗り込む。
見た目だけじゃなくこの車は中身も凄かった。
シートはフカフカで昼寝をしたのになんだか眠くなりそうだ。
眠らないように姿勢を正し、チラッと横目で東條を見ると
中央の肘置きに左肘を載せ口元に手をやり、右手でハンドルを握る姿はかなり絵になっていた。
「何か聴くならそこにCDがいくつか入っているから、好きなのをセットして聴いたらいい」
同じ人間なのにこうも違うのか。などと考えていると声をかけられ、お言葉に甘えてグローブボックスを開けCDを吟味した。
洋楽ばっかりで圭には何が何だか分からなかったのだが、CDジャケットを見て一番気に入った物を選んだ。
Ed Sheeranという人のThinking Out Loudという曲らしい。
ディスクがカーステレオに飲み込まれていき、少したらアコースティックギターの綺麗な音色が聞こえてきて、男性の甘い歌声が聞こえてきた。
窓の外はオレンジ色に輝いていて、なんとなくその曲と今の情景がマッチしているような気がし、スピーカーから聴こえてくるその甘い声に耳を預けた。
すると黙っていた東條が口を開いた。
「おまえこの歌好きなのか?」
「いや、僕洋楽全く知らなくて目についたCDを選んでかけただけです。東條さんはこの歌好きなんですか?」
「好きじゃない」
「え?好きじゃないのに買ったんですか?」
「なんとなくだ」
「でもいい歌じゃないですか。なんて言ってるかは分からないけど。ねえ、東條さん?」
「なんだ?」
「これの歌詞の意味分かりますか?」
「分かるが俺には理解が出来ない歌詞だ」
「そうなんですか・・・どういう歌なんですか?」
圭がそう聞くと東條は少しだけ困ったような顔をした後にボソッと言った。
「ベタベタに甘いラブソングだ」
そう言うと東條はタバコを吸い出した。
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