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談笑しながらの道中はすぐなもので、あっという間に家に到着した。
今はここに住んでいるんだ。と案内されたアパートは圭と叔父が二人で住んでいた頃のボロいアパートよりも大きく、立地もかなりいい場所にあった。
荷物を一緒に持ってやり階段を登る。
叔父の後に着いていくと一番端の部屋の前で止まった。
叔父はポケットから鍵を取り出し開けようとしたが、またすぐにそれをポケットに閉まいだしたのだ。
「どうしたの?」
「ちょっとイタズラしてやろう」
そう言うと、無邪気な笑顔を圭に向け、ピンポーンと音を鳴らしインターホンを押した。
少しするとインターホンから"はい、どなたですか?"と女性の声が聞こえ、それに対して叔父は地声より幾分か低い声を作り"お届けものでーす"と答えたのだ。
ガチャっと玄関ドアが開き、小柄の可愛らしい女性が顔を出した。
そして叔父の姿を見つけるとぱあっと笑顔になった。
「あ、やっぱり貴文さんだった!何も注文してないのにおかしいと思ってたの!ねぇ、その子が圭くん?すごく美人!!」
「あぁそうだよ。圭、改めて紹介しよう。俺の彼女の聡美だ、これから三人で仲良く暮らしていこうな〜」
そう言うと叔父は2人の肩に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「ちょっと〜玄関先で何してるのよ。圭くん、ほら!貴文さんなんかほっといて中に入りましょ!」
「圭が来たからってそれはあんまりだろ〜」
聡美は笑いながら圭の腕をぐいっと引っ張り、はやくはやくと急かす。それにつられて圭も笑い、叔父も後ろで笑っている。
笑いが絶えないこの家は、両親との思い出を殆ど覚えていない圭にとっては、新鮮でとても暖かで幸せだと強く感じさせた。
それからバタバタと叔父の荷解きを手伝い、聡美が用意してくれた夜ご飯をテーブルに並べ三人で食卓を囲んだ。
聡美の料理はどれも美味しく、暖かい味がした。
「圭くん、改めてよろしくね!これからは私の事も家族だと思ってくれていいんだからね。悩み事とか、困った事があったらなんでも言うんだよ?あと、早く圭くんと仲良くなりたいから敬語はナシね!」
「あ・・はい。じゃなくて。うん、分かった。聡美さん本当にありがとう」
「圭、俺も聡美も居るから。もう一人じゃないからな。何かあったら俺達に言うんだぞ」
「・・2人とも本当にありがとう。僕今すごく幸せ」
そう言い笑顔を見せると、二人も優しく圭に笑いかけたのだった。
食事が終わり叔父は朝早いからと、先に風呂に入り寝たようだ。
自分もその後で風呂に入り髪の毛を乾かしリビングへ行こうとすると、聡美はまだ起きていたようで圭くんちょっとこっちに来てと呼び止められた。
「聡美さんどうしたの?」
「圭くん服はそれだけ?」
「あ、うん。僕が家を出た理由叔父さんから聞いた?」
「うん、聞いちゃった。ごめんね」
「ううん、全然大丈夫だよ。だからね、これ以外の物を持って出てくる余裕無かったんだ」
「そうだったんだね。じゃあ、明日一緒に洋服買いに行こっか!」
「あ、でも僕お金持ってないんだ。」
「そんなの気にしないで!仕事も、色々落ち着いたらみつければいいし、今のうちはうんと甘えておきな」
「本当に何回ありがとうって言っても足りないよ。だからその代わりに、仕事が見つかるまでは僕に家の事やらせて?」
「うん!分かった。これからはそれが圭くんの役目ね!」
「うん、任せて!あ、あと聡美さん。消毒液とかある?」
「あるけど、どっか怪我した?」
「うん・・怪我というか、背中に傷があるんだけど、ちょっと膿んでて・・・消毒したいんだ。」
「あらら、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
聡美から消毒液を受け取り、洗面所の鏡で背中の消毒をする。
聡美はとても明るくて優しい。
急に来た圭を厄介払いせずに、広い心で受け止めてくれたのだ。
信用しない訳にはいかない。だが、背中の傷の詳細はまだは話すことが出来なかった。
いつか言える日が来る事を願いながらも、しみる背中と消毒との格闘を続けた。
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