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少しずつ変わる
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暗くなってきた外を眺めながら昨日とは違う夜を過ごすのか、と少し寂しい気持ちになる。
こんな気持ちになるのも東條にとってはおかしな話なのだが、こうも急に静かになると初めから圭なんて人間とは出会っていなかったのではないか。と錯覚させる程の静けさが部屋中に漂っていた。
だが圭が畳んでくれた服に、圭が綺麗に掃除をしてくれた部屋。そして圭が作っておいてくれた晩飯が静かに主張を放っており、何も無かったかのように静まり返った東條の部屋に、それらが確かに圭という存在を証明しているのだった。
カレーとスープを温め直し、冷蔵庫からサラダを取り出すとテーブルの上に並べ、別に見もしないテレビを付けるだけ付け、晩飯を胃袋の中に入れた。
二度、飯を作ってもらったのだがちゃんと褒めてやる事は出来なかった。
圭の料理は味も見た目も最高だ。だが大袈裟に褒めるのも東條のキャラではないのだ。
今まで1度も一人暮らしを寂しいなどと思ったことはなかったのだが、この時ばかりは変に寂しく圭の事が頭から離れなかった。
情が移ってしまっているから、明日にでも部屋に誰かを呼び、欲を吐き出そうと考える。
そうすれば今日の事などそのうち思い出さなくなるだろう。
人間というものは不思議な生き物で、絶対忘れないと誓ったものでさえ時間という抗えない運命を重ねれば、新しい記憶と入れ替えになるように古い記憶は脳の片隅へとやられてしまうものなのだ。
そんな事を考えながらも空になった食器を片付け、一服をし、風呂に入る準備をし始めた。
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