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別々の暮らし
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PM 19:30
仕事を終え帰宅し、いつも通り適当に胃袋を満たす。
何故だか圭が帰ってからの食事は、どれだけ好きなものでも味気がない。
きっと、柄にも無い事をしたせいで、少しおかしくなっているのだと思う。
携帯の中の電話帳を開き、その中でも一番尻軽で東條が呼べば、すぐに来るような身体の関係だけの奴を探しコールボタンをタップする。
女でも男でもどちらでも構わない。
今はとにかく誰かを抱かなければ、今まで積み上げていた物が音を立てて崩れてしまう。そんな気がするのだ。
無機質なコールが鼓膜を揺らす。
5コール目でやっと出た通話の向こうからは圭とは違う、東條に媚びへつらう猫なで声が聞こえて来る。
男だと言うのに気色が悪い。
だが関係を持っている中では、この男が一番後腐れ無く、欲を吐き出すのには丁度いい相手なのだ。
インターホンが鳴り、玄関ロックを解除してやると、栗色の毛に緩くパーマをあて、あざとさを狙っているような格好の男が、悪趣味な香水の匂いをぷんぷんと漂わせながらリビングへ入ってくる。
この匂いは何回嗅いでも慣れない。
東條は男が何かを言う前に噛み付くように唇を塞ぐ。
欲しいのは言葉ではない。
身体だ。
満たしたいのは心ではない。
自分の欲なのだ。
腕を強く引き寝室へ連れていく。
今日はいつにも増して強引だね。とか何とか聞こえたが、一切答えなかった。
圭を抱きしめて寝た記憶を壊すかのように、名前も覚えていないような男を荒々しくベッドの上へ放り投げ、上に跨り素早くシャツを脱がせベッドの下に落とした。
「あっ・・・あっ!んんっ、そこぉっ・・・」
強く腰を打ち付けるとわざとらしく声を上げる。
うるさい。耳障りな声だ。
壊すように、壊れるように、そして自分が満たされるように何度も何度も腰を打ち付ける。
「――――――っ・・イくっ!・・・あぁぁあっ!」
汚い声だ。などと思っていると果てた相手の中が、ぐわんとうねり東條自身に纒わり付く。そして自分にも限界が近付いてきている。
ぐんっとスパートをかけ
「・・・く・っ」
相手の腹の上に欲を放った。
行為後、相手にシャワーを浴びさせたら、すぐに帰らせる。これが東條のやり方だ。最初は大体がそれに不満を持つが今では、暗黙の了解のようになっているから不思議だ。
この日も相手はシャワーを浴びたらすぐに帰っていった。去り際、今日はすっごく激しかった!また相手してね、などとわざとらしく言い残す所がまた軽さを倍増させる。
そんな奴等を見ていると汚れているな。などと思うが自分も一緒だ。
"愛などくだらない"
"生活していく上で愛など不必要だろう"
いつかの、自分の声が脳内に響く。
不必要なのではない、本当は人の愛し方を忘れただけなのだ。東條は23の時から恋人を作っていない。
8年間もそんな捻くれた生き方をし続けていれば、そうもなるだろう。
人を愛せなくなったのは"愛なんかにうつつを抜かしていたら仕事がおろそかになる"、そんな理由だった。
ただ、今思えばどちらも同じように守っていける程の度量と覚悟が自分には無かっただけ。という話なのだが。
今日は本当におかしい。
あれだけ自分本位に欲を吐き出したというのに、頭の中にはまだ圭が残っている。
こんな事は今までなかった。
東條はふぅ、と溜息をつき月明かりだけが差し込む寝室で煙草を点けユラユラと立ち上る煙をただぼーっと見つめていた。
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