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別々の暮らし
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携帯のアラームが鳴り、目を覚ます。
時刻は8:30。
面接は11:00からなのだが、早めに起きて気持ちを落ち着かせたかったのだ。
顔を洗おうと思い、リビングへ行くと聡美が家を出る準備をしている所だった。
「あ、圭くんおはよ!今日だよね?面接」
「おはよう。うんそうだよ」
「頑張ってね!応援してるから。圭くんはいい子だから絶対に大丈夫」
「ありがとう。聡美さんも仕事頑張ってね」
「頑張ってくるよ〜!」
行ってきますと元気よく出て行った聡美を見送り、洗濯機を回し、部屋の掃除をする。
掃除が終わるとタイミングよく洗濯も終わり、洗濯物をベランダに干した。
時計を見ると10:35。
面接先までは15分で着くが、5分前には着いておきたい。
早めに出ておくに越したことはない。そう思い圭は履歴書を持って家を出た。
初めての面接に緊張はしていたが、これから新しい生活が待っている。そう考えるとワクワクして仕方がなかった。
居酒屋に着き、アルバイトの面接で来ました。と伝えるとすぐに店長らしき人が奥から出てきた。
向かい合わせに座るとお互い、よろしくお願いしますと頭を下げる。
「店長の関口です。えっと、まずは履歴書を見せてくれるかな?」
「はい。お願いします」
そう言われ履歴書を手渡したのだが、何かがおかしい。
履歴書を見る関口の顔がどんどん曇っていくのだ。
なんだろうか。何かまずい事でも書いたのだろうか。
必死に頭の中で何を書いたか考えたが、おかしな所は何一つとして思い浮かばない。
それに、履歴書は聡美と一緒に書いたのだ。
何かあればその時にすぐに分かるはずだ。
「うーん。今22歳だよね?」
「はい。」
「学生さんではないんだよね?」
「違います」
「高校卒業してからは何してたの?」
「家庭事情で働け無くて、「あのねぇ。」」
圭が説明しようとすると、少し声のボリュームを上げた関口に遮られる。
「いくらアルバイトでも、これは雇えないよ。うちでも若い子は欲しいけど、4年もブランクがあって学生さんでもないってなったらちょっと厳しい。多分どこも雇ってくれないんじゃないかな」
「でも、働く気はあるんです・・!」
「働く気があっても、やっぱりこういう所をみるのが面接だからうちでは雇えないかな。」
「そんな・・・」
まるで後頭部を鈍器で殴られたかのように、目の前が真っ暗になった気がした。
圭に突きつけられた現実は、厳しく辛いものだったのだ。
やっぱり自分は普通には生きられない。
そう思うと辛くて苦しくて仕方が無くなる。
今まで、どれだけ苦しい思いをしたとしても、圭は諦めずに頑張ってきたのだが流石にこれは、先が見えなかった。
生まれて初めて絶望というものを味わったような気分だ。
面接が終わり、店から家までどうやって帰ったのかすらも定かではない。
叔父や聡美の居ない部屋でただ一人静かに涙を流す。この時、何故だかは分からないが頭の中に浮かんだのは修弥ではなく、東條だった。
それは、考え出すとキリがなく、大きく膨らみ胸を占領していき、気付いたら東條の事を考えただけで、何だか傷付いた心が満たされるような気持ちになったのだ。
おかしな話だ。東條の事は何も知らない。たった一日一緒に過ごしただけの相手に、どうしてこうも会いたくなるのだろう。
そしてどうして自分は、傷付いた心を東條で埋めようとしているのだろう。
考えれば考える程に、圭には分からなくなっていった。
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