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思考と感情の差
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会いたい。
早く会いたい。
その想いだけで暗い夜道をただひたすらに走った。
人もまばらな駅前を急ぎ、改札を抜ける。
丁度電車がホームに止まっており、息を切らしながら乗り込んだ。
そういえば前もこんな感じだったよなぁ。
なんて考えたら少しだけ可笑しい。
二度も急に呼び出され、電車まで走ったのだ。
だが、この前と今では走る理由が違う。
最初は30分後。と強引に時間を指定され、断りきれずに。
そして今回、圭にはちゃんと選択肢があった。だが正体不明の会いたい。という気持ちに突き動かされ走った。
ここからだと東條の最寄りまで三駅程で着く。
走り始めた列車の中で、またあの曲をイヤホンで聴いた。
三度動きを止めた電車を降り、駅の外へと出る。
夜風が圭の頬を優しく撫で、パラパラと付いている街の灯りが圭の行く先を導いているようだった。
1度東條と一緒に通った道を迷わぬようにと慎重に歩いていく。
しばらくして、見た事のある大きなマンションが圭の視界を覆い、吸い込まれるように中へ入る。エレベーターで上へと進み、東條の部屋の前で立ち止まった。
するとさっきまで落ち着いていたはずの心臓が、ドクドクと音を立てるように動きを速めた。
ここを鳴らせば会える。
そんな事を考えながらも、インターホンを押した。
それから、少しも経たないうちにガチャと音が鳴りドアノブが動くと、玄関ドアがゆっくりと開いた。
崩された前髪に、緩んだネクタイ。
背広は着ていないがジレを着ている東條が顔を出した。
「来ちゃいました。早かったですか?」
この前とは少し雰囲気が違う東條にそう声をかけると、グイッと腕を捕まれ、勢いよく中へと引っ張られる。
ぱたんと音を立て閉まる玄関ドア。
気付くと圭は東條の腕の中にいた。
ほんのりとアルコールの匂いがする。
「遅い」
そう言った声は優しく圭の耳を刺激した。
そしてゆっくりと目線が重なると、激しいキスが落ちてくる。
唇が離れ、熱の篭った目で圭をみつめる東條は雄の顔をしていた。
きっと雰囲気がこの前と少し違うのは、酔っているからだろう。
「東條さん、お酒の匂いがする」
「呑んできたからな」
「酔っ払いは嫌いです」
「少し会わないうちに、おまえはもっと生意気になったな」
「急に呼び出されて、急いで来たんです。これくらい許してください」
「生意気だな」
言葉とは裏腹に優しげな表情で見つめられ、少し複雑な気持ちになる。
正直、酔って呼び出されるのは癪だ。だがここに来るのを選んだのは圭であって。
きっと、この感じだと今日こそは抱かれるだろう。
分かっていても少し緊張してしまう。
それにこの身体をみて幻滅されるのは嫌だ。そう感じてしまった。
「そろそろお部屋に入れてください」
自分の気持ちを誤魔化すかのように、いまだ玄関にいる事を指摘する。
ぐっと腕を引かれ、寝室へと連れて行かれる。
寝室のドアが閉まり、絶える事の無い熱い眼差しで見つめられる。
あぁ、やっぱりか。
前回もこの人は自分を抱くつもりで呼んだんだっけ。などと考える。だったら 会いたい、などと思った自分は一体なんなのだろう。そう思いながらもじっと見つめかえした。
後頭部に東條の手が添えられ、もう片方の腕は圭の腰の辺りを撫でる。
そして、その次の瞬間には唇を奪い取られ、圭の口内を熱を持った舌が動き回る。
ゆっくりと上顎をなぞられ、ゾクゾクと腰のあたりが疼き、少しだけ息遣いが荒くなる。
キスだけなのにこんなにも高まるのは経験がない。
「・・・んん・・ふ・・ぁ・・」
東條とのキスは気持ちがいい。
気付いたら相手のペースに飲み込まれ、夢中になっているのだ。そのままキスをしながらベッドへなだれ込むように、押し倒され体を組み敷かれる。
見た事も無いような色気を含んだ目付きで射るように見下ろされれば、圭には逸らす事など出来なかった。
その目を見た時に、圭の頭の中で"危険"というサイレンが鳴った。
きっとこのまま抱かれてしまえば、自分の何かが変わってしまう。そのような気がしてならないのだ。
そんな事を考えていると東條の顔がぐっと近くに寄る。
「この状況で考え事か?本当に生意気だなおまえは」
そう言うと東條は片眉をクイッと上げ、少しだけ微笑むと、次の瞬間には圭の唇に噛み付くように、深く激しく口付けを落とした。
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