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一本上手
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コールが1、2と鳴り、音声が切り替わる。
「もしもし」
『もしもし。じゃないだろう。無視していたと思ったら、今度は自分から掛けてきてどういうつもりなんだ』
「すみません・・・あの、財布がなくて・・」
『財布が無い?』
「はい。財布がなくて、もしかしたら東條さんの家にあるかもしれないと思ったんですけど。見ませんでしたか?」
『どういう財布だ』
そう言うと電話越しからガサガサと言う音が聞こえてくる。おそらく電話を持ち替えて立ち上がったのだろう。
「えっと、茶色の折り畳みのやつで普通のやつなんですけど・・」
『心当たりは』
「寝室かなぁと・・・」
『今寝室を見ているが、それらしきものは見当たらない』
「あ、そうですか。ありがとうございました。それでは・・」
一方的に切ろうとするとおい。と声が掛かる。
『電話も出なかったくせに、財布を俺に探させておいて終わったら"それでは"だなんて随分と偉くなったもんだな。おまえ』
「あの、それはすみません・・それじゃあどうするのが正しいんですか。」
『自分で探せ』
「え?」
『俺の家の寝室を自分で探せと言っているんだ』
悪夢が再来したようだ。
「いや、でも今東條さんが探しても無かったんですよね?」
『あぁ。探した』
「じゃあ無いですよ」
『ベッドの下以外はな』
「へ?」
『俺の身長でベッドの下を覗くとなると、どれ程大変かわかるか?192cmもあれば普通に生活するのですら支障をきたすのに、』
東條はそう言うと"ベッドの下まではな" とやたらそこだけを強調している。
やられた。
こればかりは一本取られた。
「あー、もう分かりましたから。取りに行きます。自分で探せばいいんでしょ。今から叔父達の夕飯を作るのでそれが終わったら行きます」
『何時頃だ』
「19時頃の電車には乗れるはずです」
『分かった』
それに返事をせずにピッと通話を切ると、携帯を強めに布団の上に置き、圭は立ち上がった。
あぁ、本当に東條には敵わない。
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