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一本上手
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30分程車に揺られ、着いた先は雰囲気のいい赤提灯の焼き鳥屋。
東條の後について暖簾をくぐると、炭火のいい匂いが鼻を掠め、"いらっしゃい"といかにも鶏を焼いてそうな雰囲気の店主の声が聞こえてくる。
東條がカウンター隣の端を空けて座ったため、その空けてある端の席に座った。
ぐるりと店内を見渡すと不思議なくらい落ち着いている。土晩だというのに、全く騒がしくないのがかなり不思議だ。
「歳を聞いてなかったが、おまえ未成年ではないよな?」
「あ、22です」
「そうか。折角だから呑んだらどうだ」
「いやいや、東條さん運転で呑めないのに流石に僕だけ呑むのはできません。それに僕、まだ一度も酒 飲んだ事ないんですよ」
「だったらやめといた方がいいな。適当に頼んでいいか?」
「あ、はい。何が美味しいとかわからないので任せます。よく来るんですか?」
「いや、久しぶりだ。昔はよく来ていたが」
こんなにしっかりと会話を交わしたのは初めてかもしれない。カウンター席が近く、肩がくっついてしまっている。
くっついている左肩がじんわりと熱くなり、圭の鼓動を速める。
緊張しているのをばれないようにしよう。
そんな事を考えているうちに、隣の東條は注文を終わらせていた。
「・・・あの、無視しててごめんなさい」
タイミングがおかしいのは圭にも分かっている。
ただ何となく、何も無かったかのように接してくる東條に、一言だけでも謝っておきたくなったのだ。
「謝れるならまだ常識はあるんだな。勝手に帰るわ、電話は無視するわ散々だったが、別にもう気にしていない」
「・・・そうですか」
絶対まだ少し根に持っているような口調で言われたら申し訳なくなるもので口ごもる。
「気にはしていないが、家に帰ったら詳しく聞かせてもらうから覚悟はしておけ」
「あ、はい・・・」
そんなこんなで、いつもしないようなお互いの話少しだけしていると頼んでいたものがあらかた揃い、焼き鳥を一口齧った。
「ん、ここの鶏すごい美味しいですね。タレも美味しい」
圭感想を述べたが、隣の東條は黙々と食べつづけている。
そういえば、食べている時はあんまり喋らないな。などと思いふと隣を見る。
完成された綺麗な横顔は何を考えているのかが分からない。
何度も電話をしてきたと思えば財布を探しに来いと言ってみたり、かと思えばこんな所に連れてきてくれたり。
一体自分はこの人のなんなのだろうか。
謎は深まっていくばかりだった。
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