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日常の変化
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「圭くん、ただいま!」
「聡美さん、おかえり。お疲れ様」
「ありがとっ。あれ?圭くんもうご飯食べてるの?今日どこか行くの?」
「うん。高校の時の友達が、働いてる所を紹介してくれるみたいで、今日店長さんに会いに行くんだ。19:00に迎えに来てくれるみたいだから、それまでにご飯食べちゃおうと思って!」
散々悩んで出てきた嘘がこの程度だ。
もっとマシな言い訳を考え付く事が出来ればよかったのだが、圭にとってはこれが精一杯だった。
嘘はつくづく苦手なのだ。
「えっ!そうなの??働かせてもらえるの?」
「働かせてもらえるかどうかは、まだ分からないけど、取り敢えず会って話してくる。」
「あ、そういう事か。ちゃんと決まったら教えてね?」
「うんっ。もちろん」
聡美と話していると、玄関がガチャっと音を立てて開き、
ふぅ、疲れた。などと言いながら叔父が家へと入ってくる。
「ただいま。二人で何を話してたんだー?」
スーツを脱ぎながらニコニコと聞いてくる、叔父にこれから嘘をつかなければならないと思うとかなり憂鬱だった。
「叔父さんおかえり、あのね・・」
「貴文さんおかえりなさい!圭くんね、高校の時のお友達の紹介で、仕事が決まるかもしれないんだって!今日店長さんとお話してくるんだって!」
「お、そうなのか?圭」
自分で言おうとしてた事を聡美に言われてしまい、すっかり信じ込んでいるだろうその様子に、いたたまれない思いが込み上げる。
いつか本当の事が言えればいいのだが。
圭は良心を痛ませながらも、必死に言葉を繋いだ。
「そうなんだ。まだちゃんと決まった訳じゃないから、決まったら報告するね?」
「あぁ、そうだな。それより、その高校の時の友達は信用できるのか?」
「うん。大丈夫。信用できる人だよ。」
「そうか。それならいいけども、騙されそうになったり、過剰労働させられそうになったら、すぐに俺に言うんだぞ?」
「うんっ、分かった。叔父さんありがとう。」
そうこうしている間に時計の針は18:55分を指し、約束の時間へと近付いていた。
圭は急いで自分の食器をサッと洗い、財布と携帯をポケットに入れ、玄関を出る。
暗くなった空には月が出ていた。
雲に隠れてしまっていて星は見えない。
明日は雨かなぁ、などと呑気に考えながらアパートの階段を降りていると、前方から車のライトがみえ、圭の家の前でゆっくりと停車した。
確認しなくともそれが東條の車だという事はすぐに分かった。
小走りで車へと向かい、助手席を開け乗り込む。
「流石ですね。19:00ピッタリです。」
そう言いながらもシートベルトをしようと手を伸ばしたその瞬間、東條の腕が圭の背中に周り、ぎゅっと抱き締められ、触れるだけのキスをされたのだ。
「・・・もうっ。こんな所でそんな事したら、誰かに見られちゃいますよ。」
不意打ちだった為に、少しだけ心臓が鼓動を早める。
「仕事をしてきたんだ。少し充電するくらい、いいだろう。」
「んー。やっぱり東條さんの持論はよく分からないけど、取り敢えずお仕事お疲れ様です。」
本当は分かってはいたのだが、恋人モードの東條にはまだまだ慣れない。
わざと、分からないフリをしてはみたものの、圭の耳は赤くなっていた。
「あぁ。よし、それじゃあ行くぞ」
"お疲れ様です"に対し、"ありがとう"とは言わない所が東條らしい。
ギアを入れる音とサイドブレーキを下げる音が聞こえ、車はゆっくりと発進し始めた。
ハンドルを握る東條を改めて見ると仕事仕様で、髪の毛もしっかりと後ろへ流されている。
この姿を見るのは何回目だろうか。
オールバックだとカッコ良さ三倍増し位かな。
などと思いながらも、圭は仕事の事について尋ねた。
「紹介してくれる仕事って、なんの仕事なんですか?」
「それは着いてからのお楽しみだ」
「お楽しみって・・なんだかドキドキします。また、門前払いされたらどうしましょう・・・大丈夫かな、僕。」
「大丈夫だ。正直仕事をする上で、今までの職歴など殆ど宛にならない。必要なのは人間性だ。勿論気にする所もあるとは思うが、今から行く所の店長はそういう奴では無いから、心配するな。おまえは堂々としていればいい」
「・・堂々とですね。・・分かりました」
「あぁ。それに、俺が付いていてやるんだ。自信を持て」
そう言うと東條はチラッとこちらを見ると、空いている方の手で圭の右手を優しく握った。
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