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日常の変化
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15分程車を走らせ"着いたぞ"と、声を掛けられたのはあまり目立たないような雑居ビルの前。
車で15分程度だとしたら、電車と徒歩では30分位だろうか。
それにしても、こんな所に何があるというのだろう。圭には考えても分からない。
スタスタと先を歩く東條の背中を追っていくと、何やら色とりどりの看板が圭の目に飛び込んできた。
本当に大丈夫なのだろうか。少し不安になってくる。
目を引く色とりどりの看板を抜け、錆びた階段をカンカン、と音をさせながら登っていくと、三階の一室の前で東條は歩みを止めた。
何だろうか。
恐る恐る東條の背後から顔を覗かせ看板を見てみると、
『Dining Bar "ETERNAL"』
(ダイニングバー、エターナル)
オシャレなネオン文字でそう書かれているそこは、他のお店よりもシックな外観だが、上品なオーラが流れていた。
馴染みのないその空気感に少しだけ戸惑う。
今まで、BARなどには行った事もなければ見た事もないのだ。酒を飲んだ事すら無いというのに、果たして大丈夫なのだろうか。
不安が胸の中で、先程よりも大きくなっていく。
すると、そんな自分の状況を感じ取ったのであろう東條が、圭の手をそっと握り
「大丈夫だ。」
と一言呟いた。
圭がその言葉に少しだけ頷くと、東條は手を離しレトロな木の扉をグッ、と押し開けた。
カランコロンと耳触りのいいベルの音が鳴り、オシャレな雰囲気の空間が目の前に広がる。
気取りすぎてはいないが、どことなく品がある。
椅子やテーブル、飾っているものまで一つ一つが洗練されているように思い、呆気に取られていた。
客はまだ一人も居なかったが、時間も時間だ。まだ早いのだろう。
そして東條は、そんな圭の腕を引きながら、BARカウンターまで行くと、銀色のベルをチンっと鳴らした。
するとすぐに、シャツにベスト、蝶ネクタイにエプロンといったBARと言えば誰もが思い浮かべるような、王道な姿をしたスラッとした優しい雰囲気の男性が奥から出てきたのだ。
「久しぶりだな、徹(とおる)。」
東條がその人物を徹と呼び。挨拶をした。
「社長お久しぶりです。連れて来てくれたんですね。」
そう言うと、徹は圭の目をしっかりと見つめ微笑んだ。
「今晩は。店長の深山 徹です。社長から話は聞いていますよ。」
東條が社長?
何の事かはよく分からなかったが、今はこちらの話の方が優先だろう。
「初めまして、田端 圭です。よろしくお願いします。」
簡単に自己紹介を済ませると、
「今日は、圭くんと話がしたいだけなので、そう固くならずに座ってください。そうだ、何か飲みますか?社長はどうですか?」
「はい・・ありがとうございます。」
言われるがまま、背の高い椅子に腰掛けたのはいいものの、ここで飲み物を断ってしまったら感じが悪いだろう。
助けを求めるためにも、東條の方をチラッとみると
「俺は今日車で来ているし、圭は酒を飲んだ事が無いんだ。アルコールフリーの物で何か適当に作ってくれるか?」
「はい、分かりました。」
手際よく液体を混ぜ始める徹の手つきに、圭は目が離せなくなった。
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