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静謐な世情
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ゴミ出しをし、丁寧に掃除を済ませカウンターへ戻る。
フェイクの効いたSOUL Musicが流れた店内には、金曜という事もあってかもう客が居て、徹と何やら楽しげに会話をしながら酒をちびちびと煽っている。
「あ、圭くんちょっとこっちに来て」
徹に手招きをされ、隣に立つと、徹が客に話し掛けた。
「鶴橋(つるはし)さん。新しい子が入ったんです。
圭くん、この方は鶴橋さん。常連さんだからご挨拶して」
この鶴橋という男は40代後半から50代前半位だろうか。
笑顔が優しく、話しやすそうな雰囲気だ。
「今日からここで働かせてもらいます、田端 圭です。よろしくお願いします」
頭を下げると鶴橋はニッコリと微笑んだ。
「こちらこそ。圭くんはいくつ?」
目の前にあったグラスをクロスで拭き取りながら答える。
「22です。今年23になります。」
「22!若いなぁ。俺は49のオッサンだから若い子が羨ましいよ」
「49なんですか?すごい、全然見えないです。鶴橋さんはまだまだ若いですよ」
「圭くんはお世辞が上手いねぇ。ありがとう」
ははは、と笑いながら答える鶴橋は本当に感じがいい。
しばらく会話をし、区切りがついた頃にトイレ掃除に向かい戻ってくると、どうやら鶴橋は会計を済ませた所のようで、また来るよ。と圭に言うと店を出て行った。
それからは掃除をしたり、洗い物をしたり。
グラスを拭いたり、客と会話をしたり。
徹にレジの使い方を教えてもらい、ゆっくりだが会計を出来るようにもなり、初めて経験する事だらけで圭にとっては大変というよりも楽しかった。
あっという間に就業時間を迎え、店の看板がOPENからCLOSEへ変わる。
「お疲れ様。今日一日やってみてどうだった?」
「お疲れ様です。何だか全部が新鮮でとっても楽しかったです。覚える事は沢山あるけど、もっともっと色んなことを知りたいなって思いました。」
「それはよかった。圭くんはお客さんとちゃんと会話が出来るから、安心だよ。その調子で頑張ってね。分からない事はすぐに聞いて。」
「はい、頑張ります。そうだ、徹さんはお店に何時からいるんですか?」
「基本的に19:00くらいには店に来てるけど、どうして?」
「勉強したい事が沢山あるので、早めに来たいんですけどいいですか?」
「あぁ、そういう事か!うん、そういう事なら大歓迎。あ、そうだ、圭くんは何曜日に休みが欲しい?うちは基本的に木曜が定休日なんだけど、俺以外はもう一日お休みあげてるから」
「ありがとうございます。えっと、日曜日って休めますか?」
東條に言われた通り、日曜と答えるとすぐに徹が"大丈夫だよ"と返事をした。
会話に区切りがつき更衣室で着替え、バックヤードへもどると、私服の徹が待っていた。きっとその場で着替えたのだろう。
「終電もうないよね?今日はお客さんからお酒貰って無いし、送っていくよ」
「いいんですか?」
「もちろん。」
その言葉に甘え、圭は徹の車に乗り込んだ。
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