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静謐な世情
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PM 15:30
「今日も21時からか?」
「いや、仕事早く覚えたいので、今日は19時30分くらいには着いておきたいんです。」
「そうか。それなら、仕事まで大体4時間か。」
東條はハンドルを握っていない方の手で、サッと腕時計を確認した。
いつものように、家にでも行くのかな?などと思っていたのだが、外の景色がいつもと違うのに気付き、圭は疑問を抱いた。
「どこに行くんですか?」
「少し恋人らしい事でもするか。俺の家ばかりだったからな」
「今日もてっきり東條さんの家に行くものだとばかり思ってました」
「なんだ、家がいいのか?まあ、家だと可愛いお前が見られるから悪くないが」
「もー、やめてくださいよ。恋人らしい事したいので大人しくしてます」
「うん、いい子だ。」
わしゃわしゃと頭を撫でられ、赤くなった頬を隠すように、圭は窓の外を眺めた。
そう思えば、基本的に家でしか会っていない。
あるとしても、付き合う前に焼き鳥を食べに行ったくらいだ。
"恋人らしい事" 東條の言葉が頭を繰り返し流れる。
今まで聞き馴染みの無かった言葉に、圭は少しだけ満たされる気持ちになった。
しばらく車に揺られていると、大きなショッピングモールが目の前に現れる。今まで生きてきた中で、これ程までに大きなショッピングモールに行く事などなかったのだ。
初めて目の当たりにするその大きさに圭は驚いていた。
人間は不思議なもので、驚きすぎると本当に声が出ないのだ。その様子が可笑しかったのか、東條がはは、と声を立てて笑った。
「なんだ、おまえショッピングモールは初めてか?」
「こんなに大きいのは初めてです。こんなに駐車場も大きいものなんですね・・・驚き過ぎて声も出なかった・・・・東條さんは、よく来るんですか?」
「いや、俺も1、2回程度しか来た事がない。人が多い所はあまり好きではないからな」
「え、大丈夫なんですか?」
「あぁ、大丈夫だ。おまえがいるからな」
「どうしたんですか?今日はやけに甘いですね」
「そうか?気のせいだろう」
東條はクイッと片眉を上げ、微笑みながらそう言うと、サッと車を降りた。
絶対に気のせいではない東條の甘さに、鼓動が早くなる。
心臓がもたないかもしれない。
などと考えながらも圭は急いで車を降り、スタスタと歩き始める東條の背中を追ったのだった。
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