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静謐な世情
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PM 19:20
「帰りは迎えに来てやるから、終わる頃に連絡しろ」
「え、でも3時頃ですよ?大丈夫なんですか?」
「大丈夫だから言っているんだ。それに、日曜は一緒に居る約束だろう?」
「んー、そうですね。分かりました、じゃあお願いします。」
「あぁ。頑張れよ」
雑居ビルの前に止まった車の中で、ポンと頭を撫でられる。なんだか今日の東條はいつもに増して大人っぽい。
それに、迎えに来てもらい、靴を買ってもらい、帰りまで迎えに来てもらえるなんて、してもらいすぎではないだろうか。
「東條さん。靴買ってくれて、本当にありがとうございます。今日から使います。んー、でもなんだか履くのもったいないなぁ・・」
紙袋をぎゅっと抱きしめると、東條が笑った。
「馬鹿なのか?履かなければ靴の意味が無いだろう。それに、古くなったらまた俺が買う」
「え、これだけで十分です!いつまでも使えるように大事に履きますから!」
圭が慌ててそう言うと、ぎゅっと抱き締められる。
「勿論大事に履くのは当たり前だが、俺が言いたいのはそういう事では無い」
言っている意味が全くわからない。
暖かい腕の温もりを感じながら圭は首を傾げた。
「どういう事ですか?」
「内緒だ。とにかくおまえの靴は俺が買う」
「ほんと、不思議な人ですね」
あまりの訳の分からなさに、クスクスと笑っていると、体に回っていた手が圭の頬をそっと包み、唇が重なる。
そして密着していた身体がゆっくりと離れると、ほら、頑張ってこい。と背中を押された。
今まで近くにあった温もりが離れるのは寂しいが、仕事が終われば会えるのだ。
よし、と気合を入れ、圭は足を踏み出した。
錆びた階段を上がり店のドアをグッと押す。
カランコロンという音を聞き、カウンターで仕込みをしていた徹が、顔を上げニコリと微笑んだ。
「圭くんお疲れ様。」
「お疲れ様です。」
挨拶をし、バックヤードで制服に着替えホールに戻ると、仕込みが終わったのであろう徹が、何かを熱心に見ていた。
「何見てるんですか?」
「あ、これね。うちは一応ダイニングバーだから、頼まれたらフードも提供するんだけど、それのメニュー。」
手渡された小さなメニューを見てみる。
・オムライス
・ナスとベーコンのトマトソースパスタ
・唐揚げ
・フライドポテト
・ミックスナッツ
・ドルティアチップス
・シーザーサラダ
意外と少ないような気もしなくはないが、従業員が少なければ仕方ないだろう。
それよりも圭は"オムライス"という文字に目を輝かせた。
「オムライスも出してるんですね!僕、結構料理作るんですけど、オムライス大好きなので、一人の時はよく作って食べてるんです」
「そうなの?じゃあちょっと作ってみてよ、レシピ渡すから。」
「あ、分かりました。なんか緊張します」
圭がそう言うと、徹は少し笑いながら"大丈夫大丈夫"と圭の肩をぽんぽん、と叩いた。
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