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静謐な世情
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手渡されたレシピに目を通す。
綺麗な字で分かりやすく書かれている。
チキンライス
・白米
・ウインナー
・玉ねぎ
・ケチャップ
卵
・卵
・バター
至って普通のオムライスだ。
だが、圭からしたら少し物足りない。
アレンジしても大丈夫かな?などと思いながら、卵をボウルに割り入れ、マヨネーズと牛乳を投入し、かき混ぜた。
大丈夫かな?などと思っている割には躊躇いはないのだ。
次に、チキンライスを作るのだが、ここでも少しだけアレンジをする。
炒めた具材にご飯を入れ、全体的に混ぜたらケチャップとコンソメで味付けをし、ブラックペッパーを少しだけ振ったらご飯茶碗に入れ、形取りをする。
そしてフライパンをさっと洗い、バターを溶かして卵を流し入れ、トロトロの状態でチキンライスの上に乗せた。
ケチャップを上にかけ、グラスを拭いている徹の元へ持っていく。
「徹さん、出来ました。」
「え、もう作ったの?はやいね。じゃあ一口味見させてもらうね。」
「はい。」
徹は"いただきます"と言うと、オムライスをスプーンで掬い口へ運ぶ。
この瞬間が圭にとっては一番ドキドキするのだ。
不味かったらどうしよう。
そんな圭の不安をよそに、徹はそれを何回か咀嚼し飲み込むと、もう一口掬い口に入れた。
「圭くん、チキンライスって何入れた?」
「えっと・・ご飯とケチャップと、ウインナーとコンソメとブラックペッパーを入れました」
やはり、アレンジはまずかったか。などと後悔をしていると、徹がサッとどこかへ行き、何かを手にして戻ってくる。それを圭に手渡すと、口を開いた。
「それ。ほかのメニューのレシピなんだけど、今日からフードは圭くんに任せてもいいかな?」
「え・・僕が作って提供しちゃっても大丈夫なんですか?」
「もちろん。だって俺が作るのより美味しいし、見た目も完璧だからお願いしたいんだ。」
「や・・やります!」
「うん、じゃあ決まり。圭くんはうちのお料理担当って事で!」
そう言って微笑んだ徹に、圭も笑顔で返す。
思わぬ称号を貰った圭はかなりの喜びを感じていた。
はやくもお店に貢献できるのは嬉しい事だ。
少し浮かれながらも急いで残りのオムライスを胃に収め、酒の試飲以外でオープン前にやらなければいけない事をし始めた。
まずは、酒のボトルの形と名前を覚える所から。
試飲はその後だ。
メモに分かりやすくボトルの絵と名前を書き、次にグラスと器具を片っ端から眺めた。
一度全部を見終えると、もう一度端から食い入るようにじっと見て歩く。
圭にはその作業ですら楽しくて仕方がなかったのだ。
夢中になって酒のボトルをみたり、グラスを繰り返し見たりしていると、あっという間にOPENの時間になっていた。
「圭くん、お店の看板やってきて」
グラスを拭いている徹に声を掛けられ、"はい"と返事をすると、CLOSEの看板をOPENへと裏返した。
今日から自分がフードを担当する。
そして仕事が終われば東條が迎えに来てくれる。
それを脳内に浮かべ、"よし"と気合を入れると、店内へ戻った。
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