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静謐な世情
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何かに一生懸命になっている時や楽しい時程、時間というものは早く進むものだ。
最後の客が店を出て行き、店の看板をCLOSEに変えると、圭は徹と共に店内の掃除をしていた。
すると急に、あれ?と声を出す徹に圭は首を傾げる。
「圭くん。そういえばその靴どうしたの?」
「あ、これですか?仕事祝いだってプレゼントしてもらったんです。僕には勿体無いくらいです。」
「ううん、よく似合ってるよ。社長から?」
誰から貰ったなどとは一言も言っていない。
何故分かるのだろうか。
「あ・・・はい。そうです、どうして分かったんですか?」
「分かるもなにも、俺は圭くんと社長の関係を知っているからね」
その言葉に驚きが隠せなかった。
「東條さんから聞いたんですか・・・?」
「うん。恋人を働かせて欲しいって電話で言われたからね。」
「えっ、じゃあ・・・徹さん最初から知ってたんですか?!」
「ごめんね、知ってた。」
困ったように少しだけ笑う徹に、不安が押し寄せる。
知っていたとはいえ、男同士だ。
どう思っているかなんては分からないのだ。
その様子を感じ取ったのか、徹が優しい口調で話し始めた。
「大丈夫。偏見はないよ。びっくりはしたけどね?それに、社長は8年も恋人を作って無かったから、そんな人がやっと愛せる人を見つけたなんて、素敵じゃないか。相手が男であろうが女であろうが、祝福すべき事だと思ったよ俺は。」
「徹さん・・・」
その言葉に圭の涙腺が緩む。
必至に涙を堪えていると、カランコロンと音がし、BARの扉が開いた。
すると、徹が圭の肩をぽん、と叩き
「噂をすればなんとやら。だね。」
ニコッと笑い、キッチンへと入っていった。
言っている意味がわからなかったため、顔を上げ扉の方を見てみると、と東條が立っていた。
「あっ、東條さん」
「なんだ?徹と何を話していたんだ?」
サッと近付き顔を覗き込まれる。
圭は、微笑みながら言った。
「東條さんには、内緒です」
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