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時計の歯車
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火曜日。
昨日はあのまま何事も無く業務が終わり、徹の車で家まで送ってもらったのだ。
そして今日もまた1日が始まる。
看板がOPENに変わった店内では、徹が奏でるシェイカーの音とBGM。そして、客の話し声がいい具合に混ざり合っていて心地がいい。
圭はグラスを拭きながらふと考えた。
東條は今頃何をしているのだろうか。
相変わらずメールや電話で連絡を取り合う事は無い。
大人はみんなそうなのだろうか。などと考えているが自分も22歳。十分大人だ。
そんな事を考えていると、カランコロンと店のベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
そう言いながらふと顔を上げると、見覚えのある顔が圭の目の前にあった。
「やあ、昨日ぶりだね。今日も来ちゃったよ」
やあ、と微笑むその人物は國井だったのだ。
「あ、國井さん。今日もいらしてくれたんですね。ありがとうございます。鶴橋さんはご一緒ではないんですね?」
「あぁ、うん。鶴橋さんは奥さんの都合で来られないみたいだったから一人で来たんだ。圭くんの顔が見たくて。」
何となく含みのあるようなその言葉に何かが引っかかるが、取り敢えずは今は酒だ。
何を飲むかを聞かなければいけない。
「・・そうなんですね。あ、國井さん、お酒は何になさいますか?」
「うーん・・シェリートニックにしようかな」
「かしこまりました。」
注文を受け、それを近くに居た徹に伝えると"あ、マスター"と國井が口を開いた。
「圭くんにロブ・ロイを作ってくれるかな。」
「・・ロブ・ロイですか?」
「うん」
「かしこまりました」
その言葉に徹が一瞬だけ動揺したような気がするのだが、気のせいだろうか。
それにしても酒を飲むのは初めてだ。
客から何かにつけて酒を頂く事がよくある。と徹から聞いてはいたのだが、それが実際に今。となると少し緊張するもので。
圭は緊張を隠すかのように、キッチンへ行きトマトを切っているとスッと隣に徹が立ったのだ。
「ねえ、圭くん・・・」
ここまで歯切れの悪い徹は見た事がない 。
一体どうしたというのだろう。
「どうしたんですか?」
「あの、國井さんが頼んだお酒あるでしょ?」
「あ、はい。」
「あれ度数高いから気を付けてね。圭くんはお酒初めてだし、チビチビ飲むんだよ。あっ、それと」
「・・なんですか?」
「國井さんは少し気を付けた方がいいかも。」
國井には気を付けたほうがいい?
どういう事なのだろうか。
よく分からないが取り敢えず圭は"分かりました"と返事を返し、ホールへと戻ったのだった。
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