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時計の歯車
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「そいつはどんな奴だ」
耳元でボソッと聞こえた声に反応が遅れる。
「・・え?」
「だから、おまえにロブ・ロイをやった奴はどんな奴なんだ」
すると、次の瞬間ガシッと腕を掴まれ、さっきまで自分の前にあったシンクを後ろに感じ、あぁ、自分は後ろを向かせられたんだ。と思考が遅れて理解をする。
そして見下ろすように鋭い視線を感じた。
だが圭には東條がここまで不機嫌な理由が分からない。
それよりも、自分の手に付いたままの泡の方が気になり、
「ちょっと・・・僕、手に泡ついたままです。東條さんの服が汚れちゃう・・・」
そう言うと手と目線を後ろにやり、水道で手を洗おうとしたその時だった。
グイッと顎を掴まれ上を向かされ
「おまえ。まさかとは思うが、そいつと何もないだろうな」
と地を這うような低い声と、怒りを含んだ視線が圭の全身を震え上がらせた。
少しでも動いたら殺されでもするのではないか、と錯覚してしまう程の雰囲気に、圭は怯んでしまい声も出ない。
「おい。何か言ったらどうなんだ」
一体何がどうしてこうなったのだろうか。
それ程までに怒らせるような事は言っていないはずだ。
それに、そいつと何も無いだろうな。というのはどういう事なのだろうか。
「・・・・あ、の。・・・どういう事ですか?」
必死に絞り出した声は掠れていて、みっともない。こういう時の自分の気の弱さにはつくづく嫌になる。
圭のその言葉を聞くと東條は、はぁ、と溜め息を吐き呆れたように口を開いた。
「もういい。話にならない。ロブ・ロイ カクテル言葉 で調べてみろ。」
東條はそう吐き捨てると、パッと身体と手を離しスタスタと寝室の方へ行ってしまった。
パタリ、と音を立てて閉まる扉の音を聞くと、スゥーっと身体から力が抜け床にしゃがみ込む。
あんな東條は初めてだ。
今までにも機嫌が悪い事はちょこちょこあったが、これ程までに怒りを露にした事はなかった。
一体何をしたって言うの。
これ程までに、怒られなければいけない理由は何なのだろうか。
考えれば考える程意味が分からない。
その理不尽さに悔しさが込み上げポロポロと涙が零れ落ちた。
ヒクッヒクッとしゃくりあげながらも
「なんっ・・なの・・・・」
ポツリと呟いたその言葉は広い部屋の中では小さく虚しい。頬から流れ落ちた涙は、キッチンカーペットの上に吸い込まれて消えていく。
一方的に怒られ、一方的に突き放され、圭の頭の中にはぐちゃぐちゃと色々な感情が渦巻いていた。
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