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綺麗 /kyrt
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ーside rtー
自分でも扱いきれないこの能力に俺は何回恨んだだろう…?
いわゆる、超能力とかいう部類で、俺の家系はほぼ全員が能力をもっていた。
だけど俺は一族の中でも最悪な能力をもってしまった。
それは、『人の死ぬ未来が分かってしまう』、ということ。
今日いつ頃誰が死ぬか、分かってしまう
優しい母は、『その能力を使って人を助けなさい』と言ってくれた。
だけど小さい俺は無力だった
見えるくせに、何もできない非力な自分が嫌だった。
違うか。
目をそらして、見ないフリをして
何もしてこなかったのか。
そんな俺も成長してある程度その能力をコントロール出来るようになった。(かなり体力を使うけど…)
だけどある日突然、その能力自体働かなくなった。
何故だろうと不思議にも思ったけど、
別にいいかな、とも思っていた。
だって毎日能力で苦しまなくていいじゃん?
だけど、それが何を指すのかだんだん分かってきた。
(あぁ、なるほどね…)
(俺、近いうちに死ぬのか。)
自分のことになると、まるでこの能力は働かないようだった。
まぁこれはあくまでも俺の予想だけど。
だけどその予想はなぜだかすごく当たっている気がしてた。
それ以来俺はびくびくしながら生きてきた。
いつ死ぬか分からない、もしかしたら今日かもしれない。
もしかしたらこの
1秒後かもしれない。
拭いきれない不安しか溢れなくて これを『恐怖』という感情以外でどう説明すればいいのか分からない
1つあげるとしたら『絶望』だろうか ?
俺はそんな絶望にさえも慣れてきてしまった。
死にたいする恐怖が薄れていったのだろうか。
つくづく、自分はおかしいと思う
だけどその代償なのか、俺にはほとんど感情がないと言っても過言ではないレベルまでいた。
それからだろうか。
好きという恋愛感情を見つけたのは。
嬉しかった。 まだ自分は人間なんだ、そう思えた気がした。
だけど、世間一般ではおかしい感情らしいから、キヨくんのためにも、この感情を押し潰そう、と決めた次の日からだった
あなたが、「月が綺麗ですね」なんて言ったの。
本当はね、最初から意味はわかってたんだけどさ、
でも知らないフリして、分からないフリして
「…そうだね?」なんて言ったの。
本当は、本当はね、ずっとキヨくんの隣にいたいんだけどね、
俺はいつか死ぬんだよ?
もしも俺の死ぬ未来のせいで、
キヨくんも巻き込んじゃったら?
キヨくんが死んじゃったら??
…多分そうなると、俺は俺を一生責め続ける
だから
だから俺は気づいてないフリを演じ続けた。
辛くても、あなたのためなら。
キヨくんは毎年夏祭りの帰りに告白をしてくれてた
めちゃくちゃ嬉しかったんだよ。
こんな俺をずっと想い続けてくれるんだな、って
能力を失って、約8年がたった
実はただ単に、能力を失っただけじゃないのか、とも思えてくる
だって8年だよ? 8年も何もなかったんだ。
そう考えちゃうのはごく自然なことだよね?
だけど、その期待も 脆く、 一瞬で崩れていった。
また、あの時の感覚がよみがえる
視界が白い光につつまれて、頭痛が激しくなる。
嫌な予感がする
(どうか、はずれてくれ…!!)
そんな願いも散って、
分かったことは
どうやら今日は
俺の命日だ。
それと同時に、今日は夏祭りの日だ、。
もう、今年で最後だ。
だから今日は一段と綺麗にして、好きな人に、キヨくんに会いに行こう。
楽しい時間は、あっという間って、本当だ。
あんなに楽しかった夏祭りも、もう終わって、いつもの帰り道
どんなくだらない話をしても、今日が人生の最後となると、楽しくなる。 それと、悲しくなる。
もうキヨくんに会えない、なんて
だけど、俺は決めてる。
絶対に、キヨくんには想いを伝えない。
これが、最後の我儘だから、
キヨくんは相変わらず、「月が綺麗ですね」って言ってくれた。
毎年変わらない言葉だけど、やっぱり好きな人からの告白はさ、嬉しいね。
でも俺、ずっと気になってたことがあってさ。
どうして夏祭りの日に、ずっと「月が綺麗ですね」なんて言ってくれるんだろう、ってさ。
もしかして、もしかしてだけど、
「ねぇキヨくんもしかして、俺のこと分かって言ってるの?」
もしかして、俺が死ぬこと、分かってて言ってるんじゃないか、って、。
「え?何が?」
「…やっぱりいいや!!w」
「えー…なんだよ…」
なんだ、良かった。ただの天然かよ。
「レトさんはさ、わざとなの?」
わざと、って、…あぁ、多分だけど、告白のことか…
ごめんね、本当は大好きなんだけどね、。
最後まで、好きじゃないフリをさせてください。
「……さぁ?」
「レトさ「キヨくん。」
俺は、『人の死ぬ未来』に加えて、『人が何を言おうとしてるか分かる未来』まで分かるようになってしまったのだろうか、?
だって、きっとキヨくんは、
誤魔化せないように「好き」って言う気がしたから。
だってその言葉を聞いちゃったら、誤魔化せないじゃん。
絶対、振らなくちゃいけないじゃん。
ごめんね、自分勝手だって、分かってるんだけどさ。
「俺も」って言ったらキヨくんが死んじゃうかもしれない
「ごめんね」なんて 好きなのに振りたくないし、なにより、大好きな人の傷ついた顔なんて見たくない。
だから、ごめん。
「じゃあね」
「おう、…じゃあまた明日」
「……うん」
明日、か
ごめんねキヨくん、
ばいばい。
泣きそうなのを必死に堪えて俺は家に入った
もう俺は、タイムリミットだ
体がそう告げていた。
せめて、最後に、言わせて、
俺は家のなかで、小さな声で言った
「キヨくん、大好き。
どうか、幸せになって。」
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