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カゾクの始まり
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俺が3歳の頃、母親が交通事故に遭い、3つ年上の兄と死んだ
周りは父子家庭である俺のことを「可哀想な子」という決めつけで接して来ることが多かったが、正直なところ母親の記憶も兄の記憶もあまり残っていない
幸か不幸か、小学校に上がるまで俺は父子家庭であることが普通であると思い込んでいた
小学校に入れば放課後はよく友達と遊んだ
父は多忙だった為、帰っても一人でゲームをするくらいだったから友人の家で暇をつぶす事が日課のようになっていた
友人達は家に帰れば母親がいるし、兄弟がいる家庭も多かった
幼いながらに、自分のは周りと「違うんだ」と実感するようになった
父は家庭を大事にする人間だった為、仕事が終わるとすぐに家に帰って来ていたし休日には極力家族で出かけようとしていた
俺には家族で遊びに行った記憶もあまりないが、昔から温厚な人であることはよく知っていた
そんな父が母と兄を失ってから狂ったように仕事に打ち込むようになり、うまい例えではないがその目はもう死んでいた
俺のために定時になるとすぐ帰るようにしてくれていたが、帰ってくると必ずまず俺の体をきつく抱きしめて「生きてる」と言って数分そのまま静かに震えていた
落ち着くと疲れた顔で微笑んで「ご飯にしような」というのが常だった
父もこのまま死ぬのではないかといつも思っていた
父の様子も心配だったし、俺自身周りの家庭環境を知る中で、母親が欲しいと思うようになった
丁度、誕生日が近づいていた頃に父に何が欲しいか訊かれたから「お母さんが欲しい」といってみた
父はそれまでの柔和な顔から突如目を見開いて無表情になり、すぐに元の顔に戻ると「わかったよ」、と俺の頭を撫でた
あの瞬間、あの表情は今でも忘れない
誕生日の日には俺がその頃ハマっていた戦隊モノのおもちゃを父から与えられた
「もう少し待ってな」
そう言われてまさか本当に母親が出来るのかと、不安と興味と小さな不信感を抱いた
自分から言い出したことだが、母と兄の仏壇に毎日向かい合っていたあの父が他の女性を迎えることは当時の俺でも信じきれなかった
12月25日、クリスマスの日にケーキを買ってきた父とひとりの女性、そして自分より背の高い子供が家に入って来た
「礼、今日からお前のお母さんになる凛花さんと、兄さんになる創矢くんだよ」
「礼くん、初めまして。いきなりで驚かせちゃったわね。凛花って言います。この子は貴方の3つ上のお兄ちゃん、創矢っていうの。これからよろしくね」
頭の整理が追いつかない俺は凛花さんにされるがままに創矢と握手をした
それが俺たち「カゾク」の始まりだった
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