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プロローグ 〜出会い〜
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帰りの電車は人で覆われていた。
そんな中俺、御沢 真稀(ミサワ マキ)は出入口のところで人に潰されるようにガラスに額を押し付けていた。
いつもながらのことだが、どうしても慣れることはない。
「早く帰ってやらないとな」
俺はふと言葉を漏らした。
俺の家族は物心ついたときにに全員他界した。
兄と弟、そして母さんと父さん。
その後は祖母が引き取ってくれた。
でも、俺が大学を卒業する頃に亡くなってしまった。
家族が亡くなってからはあまり人と接することはなかったし、これ以上大切なものを失うのが嫌になった俺は、周りに壁を作るようになっていた。
そんな俺を見ていた唯一の親友の祐士(ユウシ)が、俺の家に連れてきた子がいた。
腕に一杯に抱えてきたのは、シベリアンハスキーの赤ちゃんだった。
今でもドアを開けた時のことを覚えてる。
ドアを開けて、祐士より先にソイツと目が合って。
祐士の腕の中で暴れていたソイツは急に俺に飛び乗って来た。
驚いた俺は尻餅をついていた。
そんな俺の顔をぺろぺろと舐めてきたのだ。
祐士はそれに驚いた。
誰にも懐かないソイツは、いつも祐士や他の人間の腕の中で暴れたり噛み付いたりしていたというのだ。
目を合わせれば威嚇ばかりしていたそうだ。
それに困っていた祐士は、俺に引き取り手になって欲しいと頼みに来たのだ。
正直困った。でも、ソイツの目を見ていたらほっとけなくて……。
悩んでいたら祐士がソイツの話をし始めた。
『こいつね、母親と他の兄弟たちを亡くしたんだよ。ダンボールの中でこいつだけが生きてて、他の子たちは餓死してた。
何となくお前に似てる気がして連れてきたんだよ。どーやらこのハスキーくんも、お前とどこか似てると感じたから懐いてんじゃないのかな』
そう言われ改めてソイツに目をやる。
ずっと俺を見つめる瞳を見ていたら、何となく悲しい気持ちが伝わってきて…。
俺はつい……。
『コイツならいい…かも……』
祐士はまた驚いていたが。
嬉しそうな顔をして『困ったことがあれば俺だって力になるよ』そう言ってくれた。
それから早2年が経って、ソイツはもう2歳になる。
駅から歩いて数分、割としっかりした自宅のアパートに着く。ドアに鍵を差し込むと、その音を聞きつけたのかドアの前でソイツの走ってくる音が聞こえる。
「何を期待してんだか…はは」
げっそりと笑う。
そして、少し構えてドアを開く。
「ワンッ!ワンワン!」
2年前より体が大きくなった褐色の瞳のシベリアンハスキーが俺に覆いかぶさってきた。
そして、俺の顔をぺろぺろと舐める。
俺はソイツの頭を撫でてやる。
「ただいま、ハイド」
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