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待ち合わせた場所は 新横浜駅の近くにある老舗の有名ホテルの喫茶店だった。
しかし喫茶店というには あまりに ゆったりとしていた。
これで ドレスを着た女性でも居たらラウンジでも通りそうだった。
ホテルのフロントの広いスペースから少し奥まっている場所で 入口もさりげなくて 知らない人間が前を通っても喫茶店とは思われないであろう雰囲気だった。
毛足の長い厚い絨毯と背が高いフカフカのソファが置かれているが それぞれかなりの距離を置かれ配置されている。
そして 2人だけの利用なのに ソファは楽に7~8人は楽に座れるコーナーに通された。
夕方で向こうのフロントでは人が溢れるほど居るが 奥まったこのスペースには 静かな音楽が流れ 飲み物を用意する食器の音さえ聞こえない。
僕が待ち合わせだと告げると ホテルの従業員らしく 丁寧な応対で たつた一人の客である 彼女が居るテーブルにしずしずと 案内された。
「お待たせ致しました。」
何かを読んでいたらしいが 僕が言葉をかけると にっこり笑って顔をあげた。
オーダーした コーヒーが来るのを 待っていたように 彼女が口を開いた。
「お呼び立てしてすいません。ここは 奥まっているし 話も聞かれないし。真弓先生。腹を割って話しましょう。」
「はい。僕もそのつもりで来ました。」
僕も にっこり笑ってこたえた。
彼女?と呼んで良いのか 元男性だった人は 自分の生い立ちから話し始めた。
旧家で 大家族。子供の頃近所だった千春との付き合い。
そして千春の境遇。
両親が離婚して父子家庭。そして父親を亡くし、引き取られた先の寡婦だった祖母とも死別。
疎遠になっている母親の実家から かなりの手切れ金を受け取って金には困らないらしいが
よるべ無い 成人前の人間が 寂寥を募らせ 沈んでなげやりになっていくのを 彼女が支えたのだと言う。
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