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「七瀬、最近恋してるだろ。」
例の資料室の数日後である。
同級生の只倉 草太(ただくら そうた)に、そう問い詰められたのは。
「なんだって?」
「恋だよ恋。魚じゃねーぞ。ラブの方。
おまえ最近気になる女がいるんだろ」
ニヤニヤ笑いながら只倉は七瀬の顔を覗き込んでくる。
「バカ、何言ってんだ。いないよそんな奴。」
「またまたまた。
お前この頃いっつも悩ましげな顔してるよ。
授業中もさ、あの子に何て話しかけようか...
てな感じで明後日の方を向いてるんだよ。」
手に持つバナナオレをうっとり眺め、おれの肩に手を回しながら
只倉は面白おかしく話しを続ける。
「お前は、クールで硬派な優等生ってイメージが、
入学当初から染み付いてるんだから大抵の女はOKしてくれるさ!自信持て!!
...で、相手は誰よ?」
「しつけえな、だから違うっつってんだろ!
いい加減手を離せ!」
七瀬は慌てて、身をゆすり、只倉の頭に軽く拳骨をやった。いつもは軽く流すところだが、今は早く話題を切り替えたかった。
教室の中に、一番、視界に入れたくない男の姿が不意に見えたからである。
「へぇ、七瀬は好きな女がいんの?」
頭を傾げ、おどけた声が横から響く。
ああ、憎々しい。
われらが、御船さまである。
「おぉ、御船!
そうなんだよ!コイツそいつの事が気になりすぎるらしくて、最近おれに連れねーの!
恋のエキスパートの御船先生からも、悩める七瀬に
なんかアドバイスしてやってよ。」
只倉は面白おかしそうな表情を今度は御船に向けた。
七瀬は殴り倒さんばかりの視線を只倉に向けた。
御船はそんな七瀬な顔を舐めるように見ている。
「アドバイス?
そうだな...。
まあとりあえず、七瀬なら、相手は肉食系でなければダメだろうな。」
「えぇ?肉食系?
どうしてさ?七瀬なら清楚系の文学少女とかが
お似合いだろ。」
只倉は首をかしげる。
七瀬は顔を逸らし、出来る事ならその場から消え去りたかった。
只倉...。お前覚えてろ。
御船は構わず、ニヤリと口を歪めた。
「七瀬は、本性では...、
食いたい、というより、喰われたいと望んでいる人間だからさ。」
その瞬間、下腹部の方に怒り似た熱がこみ上げてきた。
七瀬はゆっくり、振り返り、殺さんばかりの目付きで御船を見上げた。
御船は穏やかに七瀬を見下ろす。
七瀬が、誰かに本気で殺意を抱いた瞬間である。
何が何だかわからぬ、只倉はポカンと天井を見上げだ。
その瞬間、
御船はそっと七瀬の耳元に口を寄せ、笑うように囁いた。
「あの日から、
ずっと、おれの後ろ姿を、物欲しげに
追ってるもんな、七瀬?」
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