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第1章
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教室内が人が集まってきた。各々が席に着き、
次の授業の準備をし始める。
もっとも、ただ一つの席は空白のままだけど…。
「…御船が、…なんだって?」
七瀬は急に、早くなった鼓動を悟られぬよう、
注意しながら、低く只倉に問いかける。
只倉はシャープペンを弄びながら、悩ましげに天井を見上げている。
「いやだからさ、
いつか御船が言ってたじゃん?
七瀬の相手は、肉食系でなきゃ務まらないって。
あれは正しかったのかなって。
だって、今までに七瀬に、
交際を申し込んで来たのって、
おっとり系とか、文学系の女の子ばっかだったろ、菱本さん然り。
やっぱもっとこう、奥手の七瀬を強引にぐいぐいと、誘惑してくれる女の子じゃなきゃダメって事なのかなあぁって…。
いっそ、押し倒して
あんな事やこ〜んな事を、してくれるような誰かオラオラ系の女の子が、
七瀬にはお似合いなのかもなぁって、アーレーってな感じで
…ついでに俺もアーレーってな感じで、
あんな事やこ〜んな事してくれたら、
俺ももう、最っっ高なんだけど…!」
只倉のお目目が、プラネタリウムの中のお星様のようにきらきらと輝いている。
只倉の、長い長い妄想演説は今に始まった事ではないので、
七瀬はため息をつき、ハイハイと相槌をうち、合いの手を入れさえしたら、万事ok。
いつもの通り、
妄想コント演説は終了して、
万全の精神状態で、授業にのぞめるのだが…、
しかし。
「ーーー聞き捨てならねぇな。」
自分でもびっくりするほど低い声が出た。
そのまま、鬼の形相を作り出し、
只倉の言動を制す。
「な、七瀬…さま?あのお顔が…。」
只倉は少し汗ばみ
驚いた様におどおどと5センチくらい身体がへりくだった。
「肉食系でなければ…駄目?奥手を…強引に?
随分、お辛いアドバイスだな、ありがとう。
だが只倉、一つだけ言っておく。
ーーー俺はな…、
肉食系のオラオラ系の、
強引支配系のお遊び人間は、この世で、
イチッバン、
心底、大ッッッッッッッ嫌いだ…!!」
七瀬の頭からは最早小さな湯気がたっている。
瞳は最早、夜叉の様にあかくなっている(ように只倉には見える)。
只倉は5センチへりくだったまま、
七瀬を宥めようと、両手を団扇に、
七瀬にぬるい風を送りこんだ。
普段、冷静な奴は怒ると怖いのだ。
これが世の鉄則だ。
只倉はおそるおそる話しかける。
「い、いや…、七瀬くん。
ごめんよ、でもおれはそこまで言ったつもりは……。」
「ーーーだが、それも事実だろう?」
不意に耳元に声が滑り込んできた。
ーーーまた、だ。
鼓動が早まる、お腹が熱くなってくる。
怒りと苛立ちで、目眩までしてきそうだ。
その男の珍しい出現に、教室も一瞬、静かになった。
御船は…、
おれの椅子の背もたれに片手を掛けて、
もう片方の腕で、七瀬の肩を絡めとり、
かがんだ体勢で、七瀬の耳元に息と言葉を吹きかけた。
「あの日は、あんなに…、
泣いて喜んでくれたっていうのによ。」
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