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第1章
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ーーーそうだ…。
分かっていた。
ーーーおれが、今まで、
御船に言ってきた事、やってきた事。
全て矛盾だらけだ。
自分でもわかってる。まったく、自分らしくない。
正しく生きていく、と、自分の胸に掲げながら、御船に近づいて、
身体を差し出した事。
七瀬にとって、自分でも、おかしい行動だと気付いていた。
ーーーだけど、
…どうして、正気でいられる?
あの資料室の光景を見てから、
七瀬はずっとおかしかった。
胸が、焦がれたように疼く。
身体が、不必要に火照る。
色香がかおる身体、雄々しい表情、妖艶な笑み。
あの瞳を、見てしまったからーーー。
そんなはずはない、と、
七瀬は何度も自分に言い聞かせた。
自分は今までそういうものと、無縁の世界を生きてきたのだ。
これからだって、そうなのだ。
つまずきたくない。陥りたくない。
ーーーあんな、男に…。
七瀬の中で、何度あの日の御船の笑顔が
再生された事だろう。
その度に、どれだけ焦り、
憎らしく思ったことか…。
あの光景を見た後で、御船が他の女といるのを
見る度に、行為の噂を聞く度に、
どれだけ、心を黒く妬いてきたことか…。
あんなただれた男に。
あんな、遊びだけの男に。
ーーー絶対、振り向く事もないと
分かっている相手に。
続くという事などない男に。
七瀬は目を薄く開き、目の前に覆い被さる男の顔に
手を伸ばした。
ーーーあってはならないのだ。
こんな男に、魅力を感じる事など。
認めるわけにはいかないのだ。
七瀬は掠れた声で、弱々しく笑う。
快感はまだ、続いていて、引いてくれない。
「ちょ…し、乗る、っなよ、…みふ、ね。
…あぁ、んっ、おれ、は…。」
御船はその行動に、少し驚いた顔をして、
動きを鈍らせた。その顔に七瀬も少し、
優越感を感じた。
今だけは、おれのものだ。
今だけは、おれが、優位にいる。
今だけは、お前は、“おれだけ"を見ている。
笑みがもれる。
伸ばした手を御船のはだけた肩にかけ、爪を立てた。
認めない。
「お、れは………。」
ーーー御船…。
お前を好きだなんて、絶対認めない。
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