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第2章
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ーーー本当に、なんでこんな事になってるんだ、おれ。
カリカリカリカリ。
自分のノートに書き込む、御船のシャープペンの音が聞こえる。
七瀬は七瀬で、公民の教科書を開いているのだけれど、まるきり頭に入ってこない。
前を向くと忌々しい顔が見えるので、
机をよそに、真横の壁に身体を向けながら教科書を開いている。
今日、100回目くらいのため息が出た。
「おい、七瀬。
お前真面目にお勉強しろ、さっきから
まったくページが動いてねえぞ。」
うるせえよ。
ーーー何でお前に言われなきゃいけないんだ…。
「…そんな事よりも、御船」
「なんだ」
「お前、何でこっちの椅子にいるんだ…?」
後ろを振り返り、真後ろに座っている御船を
見やる。先程も言ったように、御船は七瀬の向かいの席に座っていた筈だ。
御船が、悪気たっぷりの顔でニヤリと笑う。
「だから、問題が解けたから…、
七瀬先生に見てもらおうと思って
待ってたんだよ。
…何度も言ったのに、先生は上の空だったからな。」
ーーー解けただって?投げたの間違いだろう。
横目で睨みながら、御船のノートを奪い取る。
…いや、正確には七瀬のノートなのだが。
「………。」
「…どうだ?合ってるだろ?」
ノートを覗く七瀬の顔を覗きながら、御船はニヤニヤ笑みを浮かべる。七瀬は、何度も見返して確認してから顔を上げて、唸るように言った。
「…合ってる。」
御船の笑顔が更に広がる。
「…勉強が出来るのなら、
…おれとこんな所に来る必要なんてないだろうが。」
「嫌だな、先生のご享受の賜物ですよ。」
ーーーコイツ…。
七瀬は顔をしかめ、拗ねたように
思い切り顔を背けた。
途端、媚びるような声が響く。
「…なあ、センセ。
ご褒美、くれるだろ?」
七瀬は、再び御船に目を合わせ、
ノートを机に置いた。
御船の指が首にかかった。自分でも嫌なになるくらい、胸が高鳴る。
七瀬は抵抗せずに、薄目で御船の迫る顔を
眩しそうに見つめている。
御船はそんな七瀬の頬を撫でてそのまま身体を抱きすくめた。
七瀬は、観念したように目をつむり、
御船と、人目のない
図書館で深いキスを交わした。
涙腺が、少し、ゆるむ。
ーーーあぁ、もう、どうしようもない。
おれは、
本当に救いようがない。
…おれは、もうどうしようもないくらい、
この男が…。
ーーーこの男が、好きだ……。
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