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第2章
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「…あの、噂は本当だったんですか?」
掠れた声で、七瀬は問う。
足元がぐらつく。
ーーーダメだ、動揺するな…。
「タメでいーってば。
え?あの噂って?」
「本命が出来たって噂。」
長倉はきょとんとした顔で首をかしげる。
「あぁ、うん。まあ…。
…て、あれ?七瀬くん、普段御船と一緒に
居るんじゃないの?」
「いや…、おれは…。」
思わず口ごもる。
正直、他の話は頭に入ってこなかった。
ーーー御船には、本命の人がいる。
胸がつかえるような気がした。ダメだやめとけ、と思いながら、七瀬は俯き恐る恐る、
長倉に尋ねる。
「…どんな人?」
「え?」
「…御船の本命の女性。
パフォーマンス、って事は…、
その人も御船と同じ3組にいるってことか?」
しばしの沈黙が流れる。
七瀬は俯いたまま、長倉はそんな七瀬を見て、
更にあんぐり口を開けた。
「…な、七瀬くん。
あれ?いつも御船と居るんじゃないの?
トオルと、仲良いんじゃないの?」
「いや…、おれはそんなに…。
よくないよ。」
どうして誰も彼も、自分と御船が仲良しだと思い込むんだろう。現実に打ちのめされながら、
顔を上げられないまま、七瀬は声のトーンを下げた。
長倉は、一人納得したように、ははああ〜とよく分からない声を出す。
「…そういう事か、
なあんだ、アイツも意外と奥手だな。」
「え…?」
「いや何でもない、こっちの話。
…そっかそっか!七瀬くんはよく知らないか。
ごめん、急に呼び止めて悪かった。」
長倉は手を合わせ、ごめんのポーズを作る。
七瀬はろくに反応もできないまま、いや、と重い気持ちで首を振った。
「…まあ、あの御船もなかなかのチャラ男だし、
七瀬くんとは正反対のタイプだけど、
七瀬くんに危害を加えるような不良じゃないから
あんまり警戒しないでやってね!
それと…。」
長倉はガサガサとポケットをさぐり、一枚の紙切れを取り出した。
「コレ!
俺のアドレス!七瀬くん、とーろくしといて!」
「え?」
今度は、七瀬がポカンとした顔で長倉を見上げる。
今知り合ったばかりの、それも御船の友達に、
どうしてアドレスを渡されて居るのだ?
長倉は七瀬を顔を見て、ニッコリ笑った。
「御船って、アレだよ。
常識外れっつーか、なんか、色々飛んでるとこあるだろ?
同じクラスだと色々、アイツ絡みの面倒もあるかもしれないから…。なんかあった時の為に!
…それに。」
長倉は不意に近づき、七瀬の耳に囁いた。
「俺、こう見えて恋愛経験豊富だから、
いろいろ、相談乗れることもあると思うよ。」
心臓が一瞬、破裂しそうになった。
七瀬は驚き、長倉を凝視すると、長倉は再びウィンクをした。
「別に用がなきゃないで、
催促したりしねーから。」
「……。」
ーーーおれって、もしかして…、
そんな、分かりやすいタチなのか?
けれど、目の前にいる長倉からは、
派手な印象こそあれ、いやらしい、タチの悪い人間という印象は、言動からも顔つきからも窺えなかった。
見た目ほど、軽いという印象も。
少し考え、聞きたいことを飲み込んで、
長倉から紙を受け取った。
この番号に縋る日が来ないよう、祈りながら。
「…ありがとう、長倉。
受け取っておく。」
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