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第3章
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廊下が人で溢れかえっている。
喜ぶ声、嘆く声。
さまざまな声が混ざり合い、反発し合っている。
定期テストの結果が発表されたのだ。
結果と言っても、150人中上位50人のみの発表ではあるけれど。
「ななせーーっ!
ななせ、ななせ!見ろ見ろ!
俺、49位だぜーーっ!!」
只倉の手が、隣に立つ七瀬の肩をバンバン叩く。
七瀬は憮然とした顔で、貼り出された順位表を見上げている。
「…ギリッギリだな。」
「ギリッギリでも50位以内はいないだろ!!
やりー!俺って天才かも!」
ーーー俺の苦労も知らないで…。
喜ぶ只倉を尻目に、軽くチッと舌打ちしたのは秘密である。
「…良かったな。」
「これで一週間、俺の昼メシは七瀬のおごりな!」
「そんな約束はしてない。」
七瀬はもう一度、順位表に目を戻す。
一年の1位は、七瀬自身だ。
これはいつもと変わらない。
問題は2位だ。
「しっかし、驚きだなー、
御船って案外ベンキョー出来んだな。」
「…。」
…そう、御船なのである。
ついこの間まで、サボリ魔の遅刻常習犯だった御船が…。
2位。
信じられない。
軽いショックを受けた七瀬の耳に、女子の黄色い声が飛び込んでくる。
「きゃーっ!
スゴォイ!御船くん、2位だってェ!!
カッコイイーっ!!」
「勉強も出来るのねー!
今度あたしに教えてよ!」
振り向かずとも分かる。
女子の声とともに、御船が悠然と人混みから姿を現わす。
「なんか急に猛勉強でもしてみちゃったの?」
御船の腕に絡みつく女子が、上目遣いに尋ねる。
御船も笑みを浮かべて女子に答えた。
「ああ、今回は優秀な家庭教師について貰ったからな。」
「そうなんだあ、どこのカテキョ?
あたしにも教えてー」
「ダメ。俺専用の家庭教師だから。」
ーーーまさか、おれのことじゃないだろうな…。
…とは、もちろん聞けず、イチャつく御船を視界に入れぬよう、七瀬はその場を立ち去ろうとした。
…と、後ろから不意に声がかかる。
「七瀬、ありがとうな。
お前のおかげだ。」
わざとに違いない。
一瞬だけ、廊下が静かになった。
七瀬のハラワタが煮えくりかえる。
頑として振り向かない背中に、御船は軽やかに続ける。
「…でも、今度は1位を貰うぜ。」
きゃーっ、とまた女子の声が上がる。
七瀬は再び足を踏み出し、その場を立ち去った。
只倉が追いかけながら、何か言ってくるがもう耳に入らない。
七瀬は険しい顔でただ、ひたすら、歩き続けた。
そして、しみじみ思った。
ーーーやっぱりおれは、アイツが嫌いだ…!
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