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第4章
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「おい、七瀬、七瀬…!
おい、しっかりしろ!」
御船の、声が聞こえる…。
「う、ッ、ぐっ、…あ、ぐ…」
しかし、顔があげられない。
ひたすら、口を塞ぎ、這いつくばるので精一杯だ。壁の側に蹲る七瀬を見て、御船も膝をおり、屈み込む。
「七瀬。」
七瀬の背中に手が触れた。
途端、七瀬の身体が跳ねる。
『ともみ…。』
「…ひッぅ!」
「…落ち着け、七瀬、俺だ。」
「あ、ぁァ、…ぐっ…、やめ、やめてく…ゲホゲホッ!」
「落ち着け、何もしねえよ。
気分が悪いのか。」
背中をさすりながら、真っ青な七瀬の顔を見て御船が尋ねる。
七瀬が小さく頷くのを確認した後、御船は辺りを見回してトイレを探す。
「トイレはどこにある?」
七瀬はその言葉を受けて
ゆっくり、指を指す。
指された方を確認してから、御船は七瀬を抱えて
歩き出した。
本来なら、耐えられない程の屈辱に感じただろうが、今の七瀬にそんな余裕はない。
トイレに着いて、そっと身体を降ろされる。
「七瀬…、
大丈夫だ。大丈夫だから、
全部吐き出せ。」
楽になる、と囁かれた声に対し、
嫌だと、頭を振る七瀬に御船は何度も言い聞かせ、
七瀬の我慢もついに限界を超えた。
便器を掴み、胃の中の物を吐き出す。
苦しくて涙を流す傍らで、御船がしきりに背中をさすってくれている。
ーーー情けない。
自分をこれほど情けなく思ったことはない。
数分の後、
全部、出し切ったと感じた七瀬は、
御船が洗面台から取ってきた水の入ったコップで
口を洗い、何度もまた吐き出した。
荒い息を吐きながら、トイレの壁にもたれる七瀬を見て御船が尋ねる。
「…もう良いのか?」
「……ああ。」
ようやく発作も治り、一息つく。
しかし、今度は変わりに押し潰されるような倦怠感が襲ってきた。
七瀬は落ちる前に、半分閉じかけた目で、隣の御船を見て口を開いた。
「み…ふね……。」
………すまない、
ーーー…ありがとう
そう言う前に、
七瀬の視界がだんだん閉ざされて行き、完全に黒に染まったところで、そのまま意識を失った。
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