アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第4章
-
部屋に重苦しい沈黙が流れる。
七瀬はやはり、御船の顔を見ることが出来ず、
布団を握り締め、俯いている。
顔を見る事は出来ないが、
御船から発せられる負のオーラだけは、
肌で感じることができた。
七瀬は消えいるような気持ちで先を続けた。
「だから、おれは…、
あの家を出たんだ…。
県外の高校を受験して、早くあの家を離れたかった…。
本当は寮制の学校にしたかったんだけど、
それはダメだと、言われたから、
今の学校で…、
ここでの一人暮らしを許可してもらったんだ。
あの業田さんが…、
時々おれの様子を見に来る条件で…。」
「…その業田って男は、
お前のその父親の行動を止めるような事はしなかったのか?」
御船が唸るように聞く。
七瀬はゆるく首を振った。
「…止めるっていうか…、
おれが父さんを誘惑したって、思ってるんだ。
ほかの家族の人達も…、
おれが、父さんをそそのかし、狂わせたと…
事実、確かにその通りだろう…。」
「……。」
「ここに住まわせてもらってるのだって、
本当はとんでもない贅沢だ…。
おれはボロアパートでも何でも良いと言ったけれど、
…父さんは、ここをおれのために用意してくれた。
贅沢で、恵まれ過ぎているくらいだ…。
おれは、本当は、父さんにも家にも
大変な感謝をしなきゃいけない…。
それなのに…。」
七瀬が更に、布団を握りしめる。
手が白くなるほど強く握り、小刻みに絶えず震えてる。
「…どうしても、
ダメなんだ………!
あの人を、見ると、あの家に居た頃の事を
思い出す…。
おれの、わがままな身勝手と、
分かっていても…
何もかも…、逃げ出して、壊して、
消えてしまいたくなる。」
「七瀬。」
七瀬の手の上に御船が手を重ねる。
宥めるように、声をやわらげる。
七瀬は構わず吐き出す。
「お前の…、いう通りだよ…。
おれは優等生なんかじゃない…。"フリ”をしているんだ。
嫌な事から目を逸らすために…。
本当は……、
ただの、見栄っ張りで弱虫で臆病者の…!」
「七瀬。」
御船が肩を抱き、七瀬を引き寄せた。
七瀬はポロポロ涙をこぼし、嗚咽まじりに言う。
「…ただの、卑怯者なんだ…。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 164