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第6章
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ーーーああ、辛い。
もういっそ消えてしまいたい。
それが無理なら記憶喪失にでもなって、
新しい人間として生まれ変わりたい。
保健室のベッドの上で横たわりながら、
七瀬は顔をしかめた。
ーーー痛い。
いや、痛いなんてもんじゃない。
もうこれは痛みを超えて“麻痺”である。
シーツを握りしめ、ひたすら白い天井を睨む。
「そう苦い顔するなって。」
隣から呑気な、ゆったりとした声が聞こえてくる。
視線を移し、悠々とパイプ椅子で足を組む御船を睨んだ。
口はどこか満足そうな笑みを浮かべ、
瞳はいたずらっ子のようにキラキラ光っている。
「…誰のせいでこんな苦い思いしてると思ってる。」
「俺のせいだな。」
「……。」
ああ、腹立たしい。
七瀬はプイと顔を背けた。御船の笑い声が聞こえる。
あの後、
死んだように気を失った七瀬は、シャツは汗に濡れ、ズボンは精液で汚れ、という見るも無惨な姿だった為、御船の手でジャージに着替えさせられ、保健室まで運ばれた。
あんな無茶な行為の後で、
当然、授業に出られるはずもなく、今はもうベッドに伏せる事約一時間である。
後処理をしてくれた事には本来、感謝すべきなのかもしれないが、元はと言えば御船が元凶なのだからと七瀬はさっきからろくに口もきかない。
自分はジャージ姿なのに、御船は制服そのままというのがどうにも気に入らない。
何より恥ずかしい。
「七瀬〜!お前トイレで吐いたんだって!?
だいじょーぶかっ!?うぅ、そんな事も知らずにおれは…おれは…!」
休み時間、只倉と長倉が見舞いに来てくれたのだが、事情を知らない只倉はまだ今朝の事を気にしているらしく、七瀬と同じくらい青い顔をしていた。
只倉には誤解をさせたままでいた事を申し訳なく思い、何度も謝ったのだが、いまいち耳に入っていないようだった。
長倉の方は、ぐったりした七瀬を見て首を振り、
同情の言葉をかけてくれた。
ああ、気の毒に、と言わんばかりの哀れみの目で七瀬を見下ろし、無茶をするなと御船に忠告を残して、落ち込む只倉をうまく宥めながら、二人でクラスに戻っていった。
御船は当然の如く、付き添いに残った。
「心配するな。無理させた分、
ちゃんと責任もって面倒見てやるから。」
「……。」
結構だ、と言いたい。
言いたいが、身体が本当に、
鉛のように動かない。
哀しいことに、ひとりで身を起こすのがいっぱいいっぱいというのが現状だ。
ーーーああ、悔しい。
七瀬は再び、御船に視線を戻した。
恨みがましく睨みながら呟く。
「…ばか。」
「何だ、まだ煽ってんのか?」
…本当に馬鹿だコイツ。
けれどそんな男の一挙一動に一々、胸を高鳴らせ、好きだ、と感じてしまう自分は
それ以上に救いようのない、大馬鹿だ。
そして一つ、学んだこと。
とりあえず今後、御船を怒らせるような事は
極力避ける事、という事。
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