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第7章
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朝の静かな学校。
教室にはまだ誰も来ていない。
七瀬は机にカバンを置いて、溜息をついた。
昨日、あれから、
散々考えた。
御船の事や、初めて、身体を重ねた日の事。
ーーーおれは、色々言い訳をつかなきゃ、
やってられなかったけど…。
本当はわかってる。
最初から好きだったのだ。
あの資料室の行為を見た時から。
正気を失うくらい、囚われてしまったのだ。
けれど、あいつは執着とはおよそ縁遠い男だ。
一度が終わればすぐ次に行く。
思いを認めれば後から辛くなるのは自分だ。
だから、ああいう卑怯な言い方をした。
まるで自分のせいじゃないような、
最低な誘い方を。
仕掛けたのは自分だった。
どうして、御船を責めることが出来るのか。
例え、手酷く振られたって何にも文句は言えないじゃないか。自分が意図して絡んでいったのだから。
今更、傷付くことを恐れるなんて、
それこそ本当に最低じゃないか。
『好きだ…、智紀。』
あの言葉の真意が、たとえ自分の望むものでなかったとしても、七瀬は何も言えない。
嬉しかったからだ。
あの掠れた声も、すこし歪んで見えた瞳にも。
心が壊れそうなくらいの、切ない歓喜を感じたからだ。
罠であろうとなかろうと、響いたものはしょうがない。
ーーーおれは、御船が好きだ。
いい加減、もう腹をくくらねばならない。
傷付くなら付くで、ちゃんと御船から言葉を受けたい。
どんなものであっても良いから、ちゃんと自分の気持ちを伝えたい。
ーーー今日、御船に伝えよう。
そう思って、今日、こんな朝早くに学校に来た。身体はまだ、正直怠かったが、そんな事は言っていられない。どうでも良い。
まだ、御船どころか、当然、クラスメイトは一人も来ていないが、気分を落ち着けるには丁度いい。
覚悟を決めるには朝の澄んだ教室が一番だった。
七瀬は、深く息を吸う。
ーーー大丈夫、どうなったって良いんだ。
頰を二回、両手で叩き、背筋を伸ばしたところで、七瀬はカバンに手をかけた。
すると、
突然、コンコン、と扉を叩く音がする。
七瀬は一瞬、ピクリと震え、カバンを落とした。
閉まったままの扉の方を見る。
ーーー誰だ?こんな朝早く…。
生徒がきたのか?
いや、生徒が来たならわざわざノックする必要はない。堂々と入ってくれば良い。
不審に思いながら、扉に近づき、
「どうぞ。」と声をかけた。
扉が開く。
すると、すばやく数人の制服姿の男が入り込み、
七瀬の身体を押さえ込んだ。
七瀬は、声を上げる間もないままに、
口を塞がれ、何か錠剤のようなものを二粒、口に入れられる。
頭の中で警報が鳴った。
ーーーマズイ。
しかし、男達の力は強く、なんの抵抗も出来ない。
膝がガクンと折れた。
警報は鳴り止まぬまま、
身体から力が抜けて行く。
マズイ、マズイ…。
警報が段々と小さくなってゆく。
そして、そのまま、沈むように男達の腕に倒れ、
七瀬は意識を失った。
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