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第7章 side 御船
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くあ、と欠伸を一つする。
あれから御船はシャワーを出たあと、
軽食を食べ、支度をするつもりが、ずるずるソファーに沈み込み、
早く出るつもりが、逆に遅刻ギリギリの時間になってしまった。
時計を見て、強く舌打ちしたあと、
カバンをひっ掴み、急いで家を出た。
ーーー早く会いてえ。
自ずと早足になる。
早く会って、あの身体を抱きしめたい。
戸惑った顔と照れた仕草が見たい。
それを肌で感じたい。
急ぎ足で学校に向かったが、
御船が着いたのは本当に遅刻ギリギリの時間だった。
「おはよー!御船!
おまえまた随分眠そうだなあ。」
クラスに着いた途端、只倉が話しかけて来た。
今日も元気そうだ。
「まあな、色々あって。
…七瀬は?」
御船はざわつく教室を見回し、目的の人物を探す。七瀬の机は未だ空だった。
「あれ?やっぱり御船も見てない?
七瀬今日まだ来てねーんだよ、さっきからラインも送ってんのにさ、全然既読にならねえの。」
只倉が訝しげにスマホを見つめ、首をかしげる。
御船の体温が少し下がった。
ーーー来てない?
七瀬にしては大分珍しい。
いつも時間に余裕をもって登校してくるのに今日に限って遅刻?
それに、連絡も取れないだって?
「御船はなんか知らねえ?
昨日も早退してたし、具合悪いのかなあ?」
「いや…、俺も何も…。」
おかしい。
昨日の様子では、身体はたしかにキツそうだったが、熱は無かった。
腰以外には特にキツそうな所もなかったし、
別れ際だって意識はしっかりしてた。
だから今日も、あの優等生の事だ。
多少、腰が変でも変わらず、
いつも通り登校してくるだろうと思ってた。
やはり、どこか、体調を崩してしまったのだろうか。
いや、それなら、
只倉に連絡くらいして来ても良いはずだ。
御船もすかさず、ラインを開く。
七瀬からは当然、何もない。
『何かあったのか』、とラインしてみるが、
やはり既読にならない。
いやな胸騒ぎがする。
御船の表情がだんだん、険しくなって来た。
ーーーどうしたんだ、七瀬…。
何故、何もよこさない。
悪い想像ばかりが頭に浮かぶ。
あのあと、容態が急に悪くなって倒れているのだろうか?それとも、また実家の連中が来て…。
頭を振り、机に置いたカバンを再び持った。
行ってみるしかない。
七瀬の家へ。
扉に眼を向けた瞬間、そこから教師が日誌を持って入ってきた。
「ほらー、もうとっくにチャイムは鳴ってるぞ!
みんな席に着いた、着いた!」
さあさあ、と手で生徒たちを促し、担任は教壇に向かう。
只倉がたまらず、担任に向かって走りよった。
「先生!七瀬がまだ来てないみたいなんスけど…、」
弱ったような声音で只倉が問いかける。
担任は少し驚いたような顔で只倉を見返した。
「七瀬くん?
七瀬くんなら今日は具合が悪いから、休むと連絡があったぞ。もしかしたら、しばらく来れないかもしれないとも言っていたが…。」
おや、聞いとらんかね?と担任は首をかしげ、
只倉に逆に問いかける。御船の懸念がいよいよ強まった。
「いつです?」
「え?」
「七瀬から、いつ頃学校に連絡があったんです。」
御船が担任に詰め寄り、低い声で尋ねる。
思いもしない方向から質問をくらった担任は更に驚き、戸惑いながら答えた。
「いつって、今朝だよ今朝。
生徒がもうちらほら学校に来始めた頃…、直接話した人は、7時45分頃だったと言ってたかな?」
御船と只倉が固まった。
担任はハテナを浮かべながら、戸惑い顔で交互に二人を見つめている。
「…おれなんか、7時半からラインしてんのに…。」
只倉が呟く。
声はいつもより深く沈んでた。
ただ、御船の表情はもっと深刻だった。
ーーーしばらく休むだと?
「あぁっ!おい、御船くん!どこに行くんだね?」
「御船!?」
二人の声を背に、御船は教室を飛び出した。
動悸が速まる。
嫌な予感が身体中に流れる。
ーーー七瀬…。
どうか、家に無事で居てくれ。
こんな不安は過剰なものだと、証明してくれ。
スマホを見る。
無駄だろうと思いながら、電話をかけてみる。
何も応答はない。
絶望的な気持ちで御船はひたすら、
七瀬の家に向かって、
振動のないスマホを握りしめて走った。
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