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名前
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『ねぇ、なおちゃん。』
「はいっ。」
少し、緊張する。
先輩が、少しふざけたように使う“なおちゃん”という呼び方。
この呼び方は、不満や要求があるときに使われる。
『あのさ、そろそろ“先輩”呼び、嫌だな。』
ものすごいスピードで頭を回転させる。
「………えっ…………あ………っと……」
佐藤さん?違う。
下の名前………。
無理。
どうしよう。
なんて答える?
「……ふふっ」
なんとなく笑って誤魔化してみた。
これで流してくれないかな。
『こっちおいで、なおちゃん。』
あぁ、許してくれないんだ。
先輩の座るソファに近づくと、緩い力で腰を引かれる。
張り詰めた心のせいで抗うことができない。
先輩の膝の上に向かい合って座る形になった。
これは、恥ずかしい。
気持ち、背中を反らせ、先輩の肩に緩く手を着く。
「先輩、やだ……。」
『何?名前、呼びたくないの?』
「ちがっ……そうじゃなくて………。
この体勢………せめて隣に……。」
なおちゃんって呼ばれてる上に、この体勢。
俺、男なのに。
もう十分大人なのに。
まるで、女の子か小さい子どものようだ。
『ん~
名前で呼んでくれたら放してあげるよ。』
腰に回されていた腕がさらに深く巻きつき、距離が近くなる。
顔も見れない。
『ほら、“つーむーぎ”言ってみて?』
つむぎさん………。
息が止まる。
心の中で呟いただけでこれだから、声になんてできるわけがない。
「あっ………っ……………。」
それでも見つめられると声にするしかなくて、口を開いてみる。
何度も、言おう、声にしようとしてみるのだが、すんでのところで声が出なくなり、口をハクハクとさせる。
『“つーむーぎ”言ってくれないの?』
「っ…………。」
躊躇えば躊躇うほど、時間が経てば経つほど、声にすることへの恥ずかしさが増していき、言えなくなっていく。
「あのっ……ちゃんと、呼ぶので……
今日は………もう…………許してくださいっ………。」
焦りや恥ずかしさや情けなさや。
いろんな物で半泣きになり懇願する。
『わかった。いいよ。
一呼吸置かせてあげる。』
心がスッと楽になり、久しぶりに先輩の方を見る。
『でも、明日じゃだめ。
今日中ってのは譲らない。』
先輩を見たのが間違いだった。
射抜かれるように見つめられたままそう言われ、逃げられないのだと悟る。
再び緩く肩に手を着き直す。
「あの、もし、どうしても今日呼べなかったら……」
『ん~』
俺を射抜いていた視線は宙へと彷徨う。
『寝かせない、かな。』
「っ………つ…むぎ……さん……。」
本能が危機を察知したのだろうか。
深く考えることなく、声になった。
恥ずかしくて、反応が怖くて、顔を伏せたまま先輩の方を伺う。
微笑まれて。
腕が上がってきて。
頭にのせられる。
髪をくしゃくしゃっとして。
『おりこうさん。
ベット行こうか。』
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