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「あー、小山内おもしれーな」
目尻に浮かぶ涙を指で拭いながらそう言うと、未だ赤みを帯びた小山内が「ははは……」と力なく笑う。多分これはなんて答えたらいいのかわからないんだろう。
小山内は俺とは真逆の容姿をしている。
さっき小山内が評したように俺は顔がハッキリしてるので大体の人は一度会えば何となくでも顔を覚えてくれることが多い。
それに対し、小山内の顔はあっさりしている。
小さな鼻に、小さな口と薄い唇。目なんて笑うとなくなってしまう。
焼けないタイプなのか真っ白な肌と、中2ということを加味すれば許容範囲程度に低い背。細い体は俺と比べれば倍ほど違うかもしれない。
多分背とか、ガタイとかは俺が他より育ちすぎなんだと思う。
よく上級生に混ざっていても違和感ないと言われるのはきっとそのせい。
それらを差し引いても小山内は同じ人間だと思えないくらい俺とは違った。
控えめな笑い方が小山内の全てを表すかのように性格も大人しくて、先輩たちと頻繁に遊んで悪目立ちしてる俺とは同じクラスで隣の席じゃなきゃ関わりすらなかっただろう。
それを裏付けるように俺が小山内を認識したのは二学年に上がってからだった。
本鈴が鳴って、先生が教室に入ってくる。
全然授業の用意をしていなかった俺は慌てて教科書とノートを机の中から出しながら、ふとさっきまで抱いていた女の先輩に対するマイナスの感情がサッパリと消えていることに気づいた。
きっとそうなったのは小山内と談笑したお陰だと思う。
地味に俺のメンタル面を救った当の本人はシャーペンをノックしながら教壇の方を見ていた。
小山内の奥にいるクラスメイトたちも自然と視界に入ったが、やはり誰よりも肌が白いように思える。
放課後になって真っ直ぐ帰ればよかったのにホットスナックが食べたくて寄ったコンビニでりょーたさん達に捕まってしまった。勿論りょーたさんの隣には彼女である先輩がいて、その姿を見てゾッとした。
制服の上から俺のジャージを着ていたのだ。
流石にこれにはドン引きを隠すことが出来なかった。引き攣る口元と目元に、自分が酷い顔をしていることがわかる。そんな俺を見て先輩はただ嘲笑うように口角をキュッと上げるのだ。
「公園行くかー」
そういうりょーたさんにノーとは言えなかった。本当に本気で行きたくなかったけど、りょーたさんの意見に逆らうことは良いことではない。
ほぼ溜まり場になっている大きな公園の屋根つきベンチで他愛もないことを喋る。視界にチラつく自分の衣服に気がいって、適当な相槌しか打てずにいるとりょーたさんが片眉を上げて「梶、どうした?」と訊いてきた。
個人的にはそんなバカな質問やめてほしかった。
どうしたもクソもなくない?あんたの彼女が着てるジャージの胸に入った梶の刺繍が見えねーのかよ?
「アイさんが着てる服、超見覚えあんなって思って」
不満をこれ以上隠すことは無理だった。
それでも俺は自分以外が全員3年だという状況に怖気づいて茶化すようにしか、それを表現することはできない。
この人たちが中学を卒業するまで俺はきっと、ずっとこうなんだろう。
2週間前まで俺と一緒にこの輪にいた草津は、何をしたのかわからないけどりょーたさんたちにボコられて学校に来なくなった。
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