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他人がどんな人生を送ってきたか、普段どんなことを考えているのかが、一発で分かってしまうのだ。
この間、初めて見ず知らずの扉に入り込んだ。
最悪の一言に尽きる。
簡単に言うと、夢の中で隣人に殴られた。
そこは恐らく隣人の部屋だ。そこには何人もの女性が部屋を出入りする。最初はどの場合もいい雰囲気になっていたがしばらくすると女性は隣人の拳と蹴りを食らって泣きながら家を飛び出していく。すると今度は別の女性が…を繰り返す。
しばらく部屋の中の置物目線だった自分の視点はとある女のものになっていた。
隣人は結多の精神が入り込んだ女を、愛でながら酒を飲み機嫌が良い。女もチビチビと酎ハイだかカシオレだかを舐める。
結多自身、酒を1杯飲んだだけで出来上がってしまうのだが、女の手は止まらない。
彼は夢の中の人物の精神に入り込むことしか出来ない。
そのうち、何が原因だかは忘れたが、甘いひと時はいつの間にか言い争いに発展していた。
最初は、女も強く言い返したが、だんだんとその威力を失い、口から言葉が出なくなった。
自分でも何か言い返したいと考えたが、声が出ない。
ただ、女の心情に呼応するかのように涙が止まらない。
「泣けば済むって思っているのか」
にやり、
男の口元が大きく歪んだ。
と、自分の体は人一人眠れるサイズのソファーに倒される。
大きく三日月型に上げた口角から漏れ出す大音量の暴言。
そして男からしても大きく感じる図体から繰り出される拳、蹴り。
ぐじゃぐじゃ、ぐじゃぐじゃ。
確かに、男は女の表情と彼女に対する行為に興奮していた。
猛々しい息遣い。ますます割ける口。人間とは程遠い獣のそれ。
視界には正直みたくない色が入ってきた。
滴る赤。増える藍。汚い手に見える銀。そして、どこからか噴き出た白。
俺、夢の中で死ぬんじゃないか。
じゃきり、
体を切り裂かれたのだろうか。
起きて最初に飛び込んできたのは、穏やかな早朝の光だった。
次の日、ゴミ出しに行った先で隣人に鉢合わせた。
「ちわっす」
「…ざいます」
あまり話したことが無い彼だが、時々近くの散髪屋で真面目に美容師をしているのを見かける。
そもそも現実では女が出入りしていたり、悲鳴が聞こえることさえ無いのだ。
もしかしたら、彼の過去か、或いは底にあるぐちゃぐちゃした欲求なのか。
結局、むやみに他人の夢に入ると厄介目に合うと学習した。
そんなことがあり、中々、他人の夢に入ることが出来ず、今日もひたすら包丁男に追い掛け回されていたのだった。
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