アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
54
-
「これで、あとは郵便局に出せば…」
「ああ」
サランはフィオリと共に郵便局に向かう。あのパーティーの招待状をソアをはじめとした国々に向けて。
2人で考えた文が完成し、今はサランの腕の中に多くの便箋が抱えられている。
フィオリの手にはパーティーが行われることを記した告知があり、広場に張り出すつもりだ。同じく国民にも開催を告げて盛り上げるためなのだが、
「見ろ、王様だ!」
「ああ、サラン様よ!元気になられたのだわ!」
「おはようございます王様ー」
「サラン様ご機嫌よう」
「先ほど取れたこの野菜です、どうぞ受け取ってください」
「こっちには自慢の新鮮な魚もあるんです」
「貿易で取れた宝石です!どうぞ収めてください」
民の賑やかな声に目をパチクリさせながらも、お辞儀をする妻に思考が持っていかれる。
フィオリが片手を上げると、先ほどまで押し寄せようとしていた人の波がふわりと引いていき、野菜や魚を持った民は「またいつかもらってくださいね」と笑った。
広場に着き、紙を貼り出せば、皆歓喜の声が飛ぶ。
「まあ、パーティーよ!」
「あと1月後だ!街を綺麗にしなくちゃなあ」
「おめでとうございます奥様!王様!」
「待ち遠しいなあ」
賑わう広場。そのの目の前にある郵便局に便箋を渡し、城へ戻ることにした2人。
「王様っ、ハーシュッドの皆さんはとてもあたたかな人たちなのですね。とても、優しくて嬉しくなります」
にこっと、サランが微笑めばフィオリも頷いて応える。
そんな2人の仲睦まじさにまた声が上がった。
「兄様っ、お姫さま」
駆け寄るアーサーの姿にまた民は盛り上がる。
「アーサー様?!30年ぶりじゃ…なんとまあ凛々しい」
「あの方がアーサー様?綺麗…」
「瞳が黄色なのね」
「兄弟が揃ったんだ、すごいことだ」
民の声とは裏腹に、アーサーの声は深刻そうだ。
「どうした」
「早くお城へ来てくださいねっ」
アーサーは笑顔で城へ戻っていく。フィオリは急ぎの事態に気づき、サランを横抱きにして追いかけた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 85