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意趣返しの跡
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「待って、ロイ!お願い!」
白田はジーンズを脱がされないように、ロイは先に進みたくて互いに必死の攻防を繰り広げる。酒の入ってない白田相手では、前回のようにすんなりとは思い通りにならない。拒む仕草で何度か肘が頬に当たり、その痛みに今夜は流されてくれそうもないのがわかる。
「もうやめてよ。」
しかも涙目でそう言われたら、ロイも罪悪感を感じ始めた。このまま強引にセックスしたとして、白田がロイを許してくれるかどうかは難しいところだ。いや、二度と会えなくなる確率の方が高い。
頭のすみの冷静な部分が大きくなる。メリットとデメリットを考え、一過性の強い欲望を取るのか、短期ながらも今まで築いてきた関係を壊さずにいるか迷う。
「ロイ、嫌だよ。」
そう言い終わる前に、白田の目からぽろぽろと涙が落ちる。抵抗していた手は、涙を拭うためにジーンズから離れた。ロイにとって今がチャンスであり、止め時でもある。未練は充分だが、無抵抗になってしまった相手を見て良心も痛む。
「ごめんね、ノボル。」
ロイの手から力が抜け、同時に頭も冷えた。抑え込んでいた体を退かしてソファーを降り、顔を覗き込むと、まつげがしっとりと濡れていて、こんな時なのに色気を感じて惑う。ため息が出た。
「おこってる?」
ようやく落ち着いた白田へ尋ねると、ゆっくりと首を振り否定する。しばし、何かに迷うような言葉を飲み込むような間があり、ロイが促すとようやく口を開いた。
「あの。実は今、好きな人がいるからこういうことはしたくなくて。ちゃんと話さなかった僕も悪いし。もしも、期待とかさせてしまってたならごめんなさい。」
その発言にロイがきょとんとなる。謝られたこともだが、まさかそんな告白をされるとは思っていなかった。一瞬、水上の顔が浮かんだが、しかしキスした時に呼んだのは違う男だ。
「好きなひとって、先生?」
こくん、と首が縦に動く。水上が相手であればまだ勝算はあったが、これでロイの失恋は確定した。
「そっか。もうおそいし、駅までおくるよ。」
物分かり良く返し、友情を守る。本日はしっかりした足取りの白田に手を貸して立たせ、服の乱れを直して身支度するのを待つ。その時に、自分がつけてしまったキスマークが首筋にあることを教えなかったのは、せめてもの意趣返しだったのかもしれない。
「ありがとうロイ。」
言いたいことを伝えてすっきりしたのか、晴れやかな笑顔を見せる白田にロイの心が陰る。失恋の痛みは少しの罪悪感と混ざり合い、ゆっくりと溶け合う。
「いいよ。行こう。」
白田の恋の行方が上手くいかないことを願い、微笑んだ。
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