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安堵と不安
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「ただいま戻りました。」
玄関でそう声をかけても返事がなかったので、リビングの明かりが消えているのを確認して廊下を進む。前回遅くに帰宅した時に自室で待ち伏せされていたことを思い出し、白田は驚かない覚悟を決めて部屋の扉を開けた。
「先生?」
室内へ向けそっと声をかけてみるも、今夜は居ないようだ。なんだかがっかりしたような気分で電気をつけ、中へ入ろうとしたところで後ろから肩を掴まれた。
「うわあっ!」
完全に背後への注意を怠っていた。予想外の出来事にびくっと肩が上がり、驚きで鼓動が跳ねる。大きな手に肩を引かれ体の向きを変えられると、至近距離で顔を覗き込まれた。いつもの煙草の匂いが微かに漂う。
「そんな驚くなよ、おかえり。」
「びっくりした。」
白田がとっさに返せたのはその一言だけで、向かい合った先生が肩から離した手で口を隠して笑いをこらえるのを見て安堵する。しかしそれもつかの間で、彼の視線が少し下に逸れると一瞬で眉間にしわがより、表情が険しく変化するのを見て不安になった。
「どうかしました?」
「なあ、今日会ったの誰。」
気のせいか声にトゲがある気がしたので、正直に答えるべきか迷う。だが、隠す事でもないと当たり障りのない返事にした。
「友達です。」
「ふうん。男?」
「はい。」
「まさか水上?」
その名前が何故出てくるのかと、目を見張りながら首を振る。普段なら、白田の交友関係になどなんの興味もない素振りなのに尋問されてる気になる。
黒谷は何かを考える表情で少し間を置き、思い出した名前を確信を持って口にした。
「あのロイスって奴だろ。」
出来ればそこまではっきりとさせたくない気分だったが、疚しいところがないのなら言うべきだと思い頷く。そもそも、白田が誰と会おうが黒谷にそれを責められる謂れはない。
「そうです。」
「そうか。じゃあ風呂行くぞ。」
「は?」
気持ちを強く持って挑んだというのに、あっさりと会話を打ち切られ肩透かしを食う。
「先生!」
「とっとと来い。」
数秒の間も煩わしいのか、リュックを背負ったままの白田の手を引いて浴室へ進む。短い廊下なのですぐにたどり着き、流れについていけずに戸惑う白田に御構い無しでリュックを降ろし、更にはTシャツを剥ぎ取った。
ジーンズのファスナーを下ろしたところで、狼狽える声が大きくなった。
「ちょ、ちょっと待って!」
「うるせえな。さっさと脱げ。」
不機嫌を隠しもしない口調と舌打ち、何がそんなに気に障ったと言うのか。ここで抵抗しても更に機嫌を損ねるだけで、諦めなどしてくれないというのは経験上理解している。
「自分で脱げます。」
一緒に風呂へ入ることに慣れてもいないが、それでもこれまでと同じように平静を装ってジーンズも下着も脱ぎ去る。じっと追ってくる視線から逃れるように眼鏡を外し、さっさと中へ入った。
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