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連続の一週間
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黒谷がさすがにおかしいと感じ出したのは、一週間連続で断られてからだった。
「なんでだよ。」
最近は寒いので風呂は一人でゆっくりと温まりたいという主張はのんだ。問題はその後の、寝室でのことだ。キスはした、体も許される範囲は服の上からなら触れた。が、その先の行為を挑もうとする度に拒まれる。
「もうっ!離れてください。」
今も黒谷のたくましい胸板を両手で押しながら、ベッドに横たわる二人の間を隔てようと頑張っている。そんなことくらいでビクともしない黒谷は、少し微笑ましい気持ちになりついニヤついてしまう。強引に腰を引き寄せ再度キスしようとして、今度は口を覆うようにぐいいっと顔を押されて睨まれた。
「キスも、今日はもうダメです!僕はもう少し間隔を開けたいんです。今までのペースだと体がちょっと辛いというか、この間ので充分に満たされてるんであと一週間はなしでも大丈夫っていうか。」
「お前!そりゃ無理だろ。」
ぎょっとして、思わず身を起こす。次いで白田も体を起こし、枕元に置いた眼鏡をかけるとスマホを掴んで何かの検索を始めた。
「あの、もしなんだったらデリヘル嬢とか呼びます?僕は外で時間つぶしてますから。」
どの子が良いですかと画面を見せられ、更にぎょっとして言葉を失う。確かに以前、好奇心からデリヘル嬢を呼び、白田に跨らせたこともあった。あれは一度しかやってないし、今では大いに反省している。もしや今頃になって恨み言かと、随分と精神的にたくましくなった助手に目眩がする。しかし、あの時のイキ顔が良かったのも事実で、それがきっかけで新刊をあの内容にしたと言ってもいいほどだ。
「すまなかった。」
素直に謝る。もう、以前のように横暴に振る舞うことは出来ない。惚れた弱みというのはすごい効力を発揮する。
「なんで謝るんですか?」
不思議そうに首を傾げるのがなおのこと怖い。何がきっかけで、そんなに怒らせたのか心当たりがないというか、逆に心当たりだらけで分からない。
「この際、言いたいことは言ってくれ。善処する。」
「先生、どうしたんですか。」
「給料上げるか?それとも旅行でも行くか?締め切りはまだ先だし、海外でもいいぞ。」
猛牛はすっかり白田になつき、大人しく飼い慣らされてしまったようだ。
「いいえ。」
白田は首を振り、息を吐くとスマホを閉じた。それから、昨日から考えていたことを口にする。
「今の状態だと仕事と私生活の区別がないので、以前のように寝室を分けましょう。時々ならご一緒してもいいですけど、しばらくは一人で寝たいです。」
「なんで急に、んなこと言い出すんだよ。」
自ら言いたいことを言えと言ったのに、口元を尖らせている三十代後半の男にときめきそうになり、気持ちを引き締める。男前な外見とのギャップでぐらつきそうだ。
「善処、してくれないんですか?」
そもそも、抱き枕の件は黒谷の心の傷が癒えるまでのはずで、その後なし崩しに一緒に寝るのが当たり前になってしまっていた。
う、と黒谷が息を詰めている。どう言ったらこの要求を無効に出来るか考えながら、無意識にサイドボードの上へ手を伸ばして煙草を引き寄せた。一本口へ咥え、慣れた仕草でライターを手に取り火をつける。
「僕が居る時、寝室は禁煙でしょう。」
「だったな。」
苦虫を噛み潰したような顔へ、優しく微笑む。
「じゃあ、今夜は自室で寝ます。好きなだけ吸ってください。」
言い切り、ベッドを出る。
「あ、おい!」
慌てて煙草を口から外し、灰皿へ置こうとするのを確認しながら告げる。
「僕のベッドに侵入するのはやめてくださいね。おやすみなさい。」
無情にも扉はすぐに閉じた。
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